心理学のリーダーシップ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 20:42 UTC 版)
「リーダーシップ」の記事における「心理学のリーダーシップ」の解説
社会心理学では様々な社会集団におけるリーダーシップの研究が行われてきた。初期のリーダーシップ研究では、各分野で称賛に値するリーダーシップを持つとされる人物のパーソナリティ特性(知性・情緒安定性・温厚さなど)を分析し、普遍的なリーダーの資質を明らかにする研究が行われた。巨人説(great person theory)とも呼ばれるこの手法から得られた結論は、優れたリーダーには分野によって優位な特性はあるが各分野と共通するパーソナリティ特性は存在しないこと、パーソナリティ特性はあくまでも資質であってリーダーシップとは直接相関しないこと、集団のおかれた状況によってリーダーの影響は異なる、というものだった。 領域の多様性と、リーダーシップとされる働きの多様性から、リーダーシップ概念の確固とした定義は「他者に影響を与える」という共通項以外は定まっていない。一般的には、目的達成における集団の活動に効果的に影響を与える過程・関係性・行動様式とされる。 一例として、D・R・フォーサイス(英語版)はリーダーシップの4つのプロセスをあげ、いずれかを強調することで様々なタイプのリーダーシップのスタイルを規定できると述べている。 リーダーとフォロワーとの互恵関係 時間・エネルギー・技術などを交換することで、報酬としてフォロワーに還元する交換関係のプロセス メンバーの動機をより高みへと導く交流のプロセス 目標達成に向けて集団を統合するプロセス 三隅二不二のPM理論など、リーダーの果たす役割を研究したモデルでは、リーダーシップには生産性を高め効果的に目標を達成する「課題リーダーシップ」と、集団内の対人関係を調整する「関係リーダーシップ」の2つの次元があることを示している。F・E・フィードラー(英語版)は、集団の特性や状況にも注目した「状況即応アプローチ」の研究によって、最適なリーダーシップはリーダーの資質と集団の状況との相互関係によって変化すると論じた。また、ハーシーとブランチャードは、集団の発達段階によって求められるリーダーシップは異なるとした状況的リーダーシップ論を提示している。すなわち錬度が低い場合は説得的リーダーシップが適切であり、中程度の場合では参加的リーダーシップ、高度な場合は委譲的リーダーシップが有効であると主張した。 成功したにせよ失敗したにせよ、集団による行為や事業の成果が、リーダー個人の集団への影響力の強さによって評価される事がある。しかし、集団が構造化し、役割分化した組織となると、リーダー個人の影響力は全体から見ると微々たるものとなる場合もあり得る。こうした状況において、リーダーの影響力を過度に評価してしまう評価態度をリーダーシップ幻想(romance of leadership)と呼ぶ。
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