建築・住宅におけるユニバーサルデザイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/11 01:55 UTC 版)
「ユニバーサルデザイン」の記事における「建築・住宅におけるユニバーサルデザイン」の解説
建築は誰もが使えなければおかしい。これがユニバーサルデザインを最初に提唱したロナルド・メイスの原点だった(用語の初出はDesigners West, 1985)。もともとは戦争で障害を負った退役軍人が出征前は何の問題もなく利用していた建築に入ることすら拒まれることが続出したのに対して、その問題を是正しようとしたのがバリアフリーデザインの始まりである(ASA A117.1-1961)が、そもそも改修するのではなくて最初からバリアをつくらないようにできているのが当たり前、利用目的が果たせないから別の建築をもう一つ建てるということはあり得ないだろう、というのが建築におけるユニバーサルデザインの主張である。 公共建築に敷地外から接近し、中に入って用事が果たせるようにするには、上下移動も含めて経路にバリアがなく、主要な機能が使えなければならないし、情報の提供に際しては視覚、聴覚、触覚などを意識する必要がある。もちろん細かいところに目をやれば、これは使えないということが起きるが、複数用意されるものを異なったデザインとすればほぼ問題を解決できる(例えば車いす対応トイレの右勝手と左勝手など)。 わが国では、前述のA117.1が及ぼした世界的な流れを受けて、いろいろな機会、場所でバリアフリー設計指針類がつくられたが、その適用は任意であったので実効は挙がらなかった。それなりに機能するようになったのは1994年に成立したハートビル法以降である。この法律では急速な高齢化の危機意識を利用する形で建築のバリアフリー化をお薦めメニューとしたが、義務ではなかったので一気に変わるまでには至らず、効果をあげるためには2002年の法律改正で建築確認の対象とされるまで待たねばならなかった。 住宅のユニバーサルデザインについては、若干アプローチが違ってくる。なぜならある住戸にふつうは複数の居住者がいるので、誰に合わせるのか、という問題が生じるのだ。これについては、いちばん必要度が高い居住者の要求を満足させるようにつくるべきということになる。あらかじめ誰が住むのか決まっているとは限らないので、おおよそこの程度は基本原則であるとしてつくり、それ以上は居住者が決まってから調整するというのが合理的である。 わが国の長寿社会対応住宅設計指針では、原則室内段差無し、要所の手すり設置(準備)、そして室内移動時の幅員確保(廊下とドア)は当初から行われるべきとされた。俗にバリアフリー3点セットと称されたが、この3つが住宅のユニバーサルデザインの基本である。それらがなされていれば、居住者の能力(の低下)に応じての対応がやりやすい。 なお、段差解消が難しいと抵抗が大きいのは浴室であったが、阪神淡路大震災後の復興住宅の建設に当たって段差無しの浴室ユニット開発が至上命題とされ、結果として民間の分譲マンションにもそれが普及した。今では家族用のマンション住戸で跨がないと入れない浴室ユニットは例外的にしか見られなくなっている。
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