床ライナの温度の評価を誤った過誤
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「もんじゅ訴訟」の記事における「床ライナの温度の評価を誤った過誤」の解説
原子力安全委員会が1997年(平成9年)12月18日、同委員会の高速増殖原型炉もんじゅナトリウム漏えいワーキンググループ(以下「ナトリウム漏えいワーキンググループ」という。)の第2次調査報告書を公表した。同報告書は、同公表時点での評価によると、漏えいナトリウムの床ライナ全面での燃焼の場合の床ライナ温度は配管室で約620℃、過熱器室で約750℃となり, 中小規模のナトリウムの漏えいによる燃焼の場合の床ライナ温度は局所的に約880℃(配管室)あるいは約850℃(過熱器室)に達すると解析されるという内容であった。 さらにm本件安全審査での漏えいナトリウムによる熱的影響についての解析評価においては、中小規模のナトリウム漏えいによる燃焼の場合を想定した解析評価はされなかったが、これは、当時の関係者が、床ライナが熱膨張によって機械的に破損するか否かの点に注目し、床ライナの全体としての熱膨張が最大になる大規模漏えい時のプール燃焼の場合を解析すれば、中小規模漏えい時の影響は、これに包含されると判断したことによるものであったが実際の床ライナの温度は、酸欠効果により床ライナ温度の上昇が抑えられる大規模漏えいの場合よりも、中小規模漏えいの場合の方が高いものであった これに対し、動燃は、本件許可申請時の床ライナの設計温度は500℃としていたが、1985年2月18日付の原子炉の設置変更許可申請(2次主冷却系循環ポンプ等の設備の変更に伴うもの)を行った際、同年8月9日付で一部補正を行ったが、そのときは設計温度を530℃に変更したが、ナトリウムが漏えいされる場合に想定される温度よりは低いものであった。 その上で、原審は、床ライナの膨張率を左右する床ライナの温度が本件安全審査の対象となる本件原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項に含まれるとした上で、本件安全審査には、上記床ライナの温度の評価を誤った過誤があると判示する。 これに対し最高裁は上記の設計温度とは、床ライナがこの温度まで全面一様に加熱されても、熱膨張によって部屋の壁と干渉しないように設計するために設定された温度であって、この温度を超えれば直ちに床ライナが機能を喪失するものではないというのである。そして、床ライナの板厚、形状等その健全性にかかわる事項は、設計及び工事の方法の認可の段階において審査の対象となる具体的な詳細設計及び工事の方法として決定されるべきものであるから、板厚、形状等が確定しない段階において、これとは別に設計温度の妥当性について確定的な審査をすることに意味はないといわざるを得ない。 また、ナトリウム漏えいワーキンググループ第2次調査報告書によれば、上記実験の約880℃はライナ材料の融点に比べて十分に低いために床ライナは溶融せず、また、科学技術庁及び動燃からの報告によると、床ライナ全体の熱膨張により破損する可能性について評価した結果、実際に設置されている床ライナは、2次主冷却系配管室(A)北側で約630℃、同配管室(C)北側で約700℃程度、その他の配管室及び過熱器室で約950℃あるいはそれ以上になっても, 熱膨張により壁と干渉することはなく, 機械的に破損するおそれはないこと、動燃は、局所的なひずみによる破損の可能性を調べるために解析を行い、また、床ライナの一部分を模擬した試験体を用いた実験を行ったところ、局所的な燃焼に対して900℃ないし950℃まではリブ(ひずみを拘束するために床ライナ裏面に溶接されている構造物)がはく離することがあるが、床ライナに損傷は生じないことが示されたこと床ライナの温度が900℃から950℃までは機械的な破損は生じないことが示されたから、界面反応による腐食を考慮しない場合には、漏えいナトリウムとコンクリートの直接接触を防止するという床ライナの機能は維持されるという見解を述べている。 以上に、鋼材が高温になれば延性を増すという特性を持っていることを併せ考えると、漏えいナトリウムによる床ライナの熱膨張については、床ライナの板厚、形状、壁との間隔等に配意することにより設計及び工事の方法の認可以降の段階において対処することが十分に可能であるということができる。
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