幸福の箱
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「岸辺露伴は叫ばない 短編小説集」の記事における「幸福の箱」の解説
『ウルトラジャンプ』2017年8月号に掲載された、北國ばらっどによる短編作品。 あらすじ 露伴は付き合いのある古物商の五山一京に「<奇妙>な品を見せたい」という名目で彼の自宅まで呼び出された。彼は中に幸福が詰まっていると伝わる『幸福の箱』という品が入った風呂敷包みを露伴の目の前に置くと、話もそこそこに部屋を後にする。 露伴はその自分勝手な行動に憤り、五山に何か企みがあり自分を利用しようとしている事を察したのでその品に手を出さず帰る事にしたが、その際に風呂敷包みの中身が崩れ、自然にほどけた風呂敷の中から無数の陶器の破片のようなものが姿を現した。 露伴は五山の策略にハマってしまった事に苛立ちを見せながらも、それがパズルであり、スタンド使いのような特別な才能を持つ人間にしか組み立てる事の出来ない品である事を理解すると、好奇心からその箱を組み立て始める。 登場人物 岸辺 露伴(きしべ ろはん) 杜王町に住む人気漫画家。古物商の五山一京に呼び出されて『幸福の箱』という品を紹介され、なりゆきで破片の状態だったその品を完成させようとする。 五山 一京(ござん いっけい) 露伴と付き合いのある古物商。食えない性格で「友達付き合いはしたくない」と言われるタイプと露伴は評しており、取引においては言葉巧みに露伴を出し抜き大金をむしり取ろうとするので良い印象を持っておらず、対策としてヘブンズ・ドアーで「岸辺露伴の質問には必ず答える」と彼に書き込むほど信用していないが、目利きとしての腕と仕事にかけるプライドは本物で、安物や贋作をつかませる事は決してしない点だけは高く評価している。 また、かなりの愛妻家であり露伴の前でものろけていたが、彼女の愛情についていけない部分もあり、「このままではふたりともダメになってしまう」と憂う一面も見せている。 露伴を自宅に呼び出して『幸福の箱』なる品を風呂敷で包んだ状態で露伴に紹介すると彼を置き去りにして部屋を離れ、好奇心で風呂敷の中を見た露伴が箱の破片を組み立て始めることを見越して彼の紅茶に遅効性の睡眠薬を盛り、露伴が箱の大部分が組み立てた所で意識を失うと部屋に戻ってきて残りを組み立て、完成した箱の中にあるという幸福を手にしようとしていた。 しかしそれは千波の策略であり、彼は箱を完成させた事で箱の中に閉じ込められてしまうが、もともと彼は千波との結婚生活における悩みを排し、新婚当初のような幸福な日々を取り戻すために『幸福の箱』の幸福を求めていたため、箱に閉じ込められた後はその中で笑顔の妻と暮らす幸福な夢を見続ける事になった。 五山 千波(ござん ちなみ) 一京の妻。一京に協力し、露伴を利用して『幸福の箱』を一京の手で完成させようとする。 夫の一京とは相思相愛の仲であり、露伴の前でも彼に付き従う貞淑な妻として振舞っていたが、その本性は夫への愛が強すぎるがゆえに彼を束縛し、仕事での外出はおろか母親の見舞いで彼女と離れる事にすらヒステリーを起こす異常な性格の持ち主であり、一京に協力していたのも箱の特性を知り、彼を箱に閉じ込めてずっと自分の手元に置いておく為であった。 計画が成功すると、露伴に全てを話した上で家にある骨董品をお礼として差し出そうとするが、彼女に嫌悪感を抱いた露伴が一京から箱の中の様子を聞き出したことにより、彼が箱の見せる夢の中の自分に愛情を向けている事を知ると嫉妬から半狂乱になっていた。 用語 幸福の箱 五山一京が露伴に紹介した、中に幸福が詰まっているとされる箱の破片。パズルのように組み立てる事で本来の形になるが、露伴の見立てによるとそれぞれの破片にはスタンド使いがお互いに惹かれ合うような不可視の法則・見えない設計図が存在し、人を選ぶパズルであるという。 元々は千波の家系に伝わっていたもので、千波によれば中を覗いたものに者に幸せな夢を見せ、魂と身体を閉じ込めてしまうという。そして一度蓋をして完成してしまうと内からも外からも決して開く事ができないが、かつてその箱を危険視した特別な人間によって砕かれてしまったとされる。
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