差戻審決定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 02:30 UTC 版)
以上の審理経過から弁護側とマスコミは、抗告が棄却されることはないにしても、「灰色無罪」の決定が下されるのではないかと危惧した。しかし、翌1984年1月30日に石田が言い渡したのは、弁護側の予想だにしない抗告棄却決定であった。 差戻審決定は、家宅捜索の際に布団包みが調べられたかについては、「布団包を開いて中を調べたと断定することには、いささかちゆうちよを感じざるを得ない」として弁護側の主張を認めた。しかし発見されたナイフについては、取り出しにくい布団包みの中に隠したという点や、その存在を他人に黙っていたという点に、一審決定と同じく不自然さを指摘した。そして、足跡はAのものと「酷似」する一方、ナイフの指紋は「判定不能」であるという鑑識吏員の証言を重視し、「右布団包内の果物ナイフは何らかの工作によるものと考える余地もある」として、弁護側による捏造の可能性を指摘した。 返り血については当初の木村鑑定の見解に沿い、Bが先に胸を刺され、血圧が低下した後に腕を刺されたために、Aには返り血が付かなかったと認定した。Bを1回しか刺していないとするAの自白についても、記憶違いとして退けた。アリバイの主張についても、そもそも確実なのは119番通報が行われた13時8分という時刻のみであり、弁護側が主張する他の時刻はすべて推定に過ぎない、として退けている。 抗告審決定は、 少年の当審及び原審の否認供述をつきつめれば、少年が果物ナイフを携帯して〔柏第三〕小の校庭にいたのと同時刻ころに、これと全く同一の大きさ、形状、色、銘柄の果物ナイフを持つた別の者が同じ校庭にいて、〔B〕を刺したということになり、しかも少年のスポーツシューズと製造特徴及び使用特徴のともに酷似する靴を履いた者が、〔B〕の刺された付近に足跡を残したということになるのであつて、これは偶然の一致として看過するには余りにも不自然であり、通常考えられないほどの極めて特異な出来ごとというほかなく、少年の否認供述の信用性には大きな疑問を抱かざるを得ない。 と指摘し、Aの無実主張も、損害賠償のために実家を売却されることへの抵抗からの虚言ではないか、と述べている。
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