アリバイの主張
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 04:44 UTC 版)
弁護側は遠藤車の付着物についても争点としたが、最も強く遠藤の無実の証明として主張したのは、遠藤には明白なアリバイが存在する、という点であった。 遠藤は事件直後の取調べの段階から一貫して、自分のトラックは事件現場を通過した後にクランク手前、電飾看板付近で大型バスとすれ違ったと供述している(上記参照)。遠藤がすれ違ったそのバスは後に新潟交通の津川駅行き最終バスであると分かったが、バスの運転手は事件現場の状況を次のように語っている。 津川警察署のバス停から約四〇メートル進んだところ、道路前方のセンターラインの付近に何かあるのが、その手前約二〇ないし三〇メートル位の地点で分かった。一〇メートル位に近寄って人と分かった〔中略〕その時は寝ていると思った。若し怪我をしたり死んでいるのが分かれば、現場を離れることはない。乗客もいなかったし、警察に連絡したと思う。ちょうどその人の横を通過する時、新潟市方向からタクシーがさしかかり、これも倒れている人を見て左に避けて徐行し、バスとは人をはさんですれ違う格好になったが、タクシーの運転手も窓を開けてその人の方を見ていた。このあと営業所に入構し、そこにいた車掌に、人が寝ていて危ないから警察に連絡してくれと頼んだ。 — バス運転手に対する尋問調書および員面調書より バス運転手は、現場で目撃した被害者が「寝ていると思った。若し怪我をしたり死んでいるのが分かれば、現場を離れることはない」として、その時点では生存していたと語った。また、その供述に登場するタクシー運転手も異変に気付いた形跡が全くなく、公判での証言でもバス運転手は変わらずに、被害者は生きていたと述べている。すなわち、バスは現場を通過してきた遠藤車とすれ違い、その後に現場で被害者の生存を確認しているのであるから、これは遠藤に完璧なアリバイがあることを示している、というのが弁護側の主張であった(ただし、バス運転手の証言にすれ違い車両について触れた部分はない)。 検察側はこの証言に対して、バス運転手はすでに死亡していた被害者を生きていると誤認した、と反論した。しかし弁護側は、徐行していたバスとタクシーの運転手が揃って異変に気付かず、現場に広がっていた大量の出血を見逃すこともあり得ない、とさらに反論した。
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