巨視的性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/15 06:30 UTC 版)
気体を観察する場合、基準となる範囲や長さを指定するのが一般的である。基準となる代表長さが気体粒子の平均自由行程より十分に大きい場合(クヌーセン数が十分に小さい場合)、気体は連続体とみなされ巨視的観点から把握される。その場合、体積の面でも十分な量の気体粒子を標本化できる大きさでなければならない。このような大きさで統計的分析を行うことで、その範囲内のあらゆる気体粒子の平均的動き(すなわち、速度、温度、圧力)を観測できる。対照的に微視的、つまり粒子単位の観察を行う方法もある。 巨視的観点で観測される気体の性質には、気体粒子そのものに由来するもの(速度、圧力、温度)とそれらの環境によるもの(体積)がある。例えばロバート・ボイルは一時期、気体化学を研究していた。彼は気体の圧力と体積の関係について巨視的観点で実験を行った。その実験でJの字形の試験管のようなマノメーターを使い、その管の一端に一定粒子数で一定温度の不活性気体を入れ、さらに水銀を入れて密封した。そして、水銀の量を増やして気体にかかる圧力を増すと気体の体積が小さくなることを見出し、数学的には反比例の関係にあることを発見した。つまり、体積と圧力の積が常に一定になることをつきとめた。ボイルは様々な気体でこれが成り立つことを確かめ、ボイルの法則 (PV = 定数) が生まれた。 気体物性の分析に使用する様々な数学的ツールがある。理想流体についてはオイラー方程式があるが、極限条件の気体では数学的ツールもやや複雑化し、粘性の効果を完全に考慮したナビエ-ストークス方程式などが使われる。このような方程式は対象とする気体の特定の条件を満たすよう理想化されている。ボイルの実験装置は代数学を使って分析結果を得ることを可能にした。ボイルが結果を得られたのは、彼が扱っていた気体が比較的低圧で「理想」的な振る舞いをする状況だったからである。そういった理想的関係は、一般的な条件の計算には十分である。今日の最先端テクノロジーにおいては、気体が「理想」的な振る舞いをしない条件下での実験を可能とする各種装置も設計されている。統計学や多変量解析といった数学が、宇宙船の大気圏再突入のような複雑な状況の解を求めることを可能にしている。例えば、図にあるようにスペースシャトルの大気圏再突入の際の負荷が材料や構造の限界を超えていないことを確認する分析などがある。そのような状況では、気体は理想的には振る舞わない。
※この「巨視的性質」の解説は、「気体」の解説の一部です。
「巨視的性質」を含む「気体」の記事については、「気体」の概要を参照ください。
- 巨視的性質のページへのリンク