巨視的な切欠きを有する場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/02 16:39 UTC 版)
「疲労限度」の記事における「巨視的な切欠きを有する場合」の解説
機械部品などは穴や段などの何らかの形状変化部を有しており、疲労破壊が発生するときはそのような形状変化部から発生する場合が非常に多い。このような形状変化部では応力集中が発生しており、平滑部に比べて応力が高くなる。このような応力集中が発生する形状変化部を切欠き(notch)と総称し、切欠きにより疲労限度が低下する現象を切欠き効果(notch effect)と呼ぶ。この疲労限度の低下率を表す係数として次の切欠き係数(fatigue notch factor)が定義される。 β = σ w 0 σ w k {\displaystyle \beta ={\frac {\sigma _{w0}}{\sigma _{wk}}}} … (3) ここで、β あるいは Kf : 切欠き係数、σw0 : 平滑材の疲労限度、σWK : 切欠き材の疲労限度。'β は材料の機械的性質、荷重形式、対象物の形状、絶対寸法などに影響を受ける。 また、破断起点となる切欠きの弾性応力集中係数と切欠き係数を用いて、切欠きに対する敏感さを表すために次の切欠き感度係数(notch sensitivity factor)が用いられることがある。 η = β − 1 α − 1 {\displaystyle \eta ={\frac {\beta -1}{\alpha -1}}} … (4) ここで、η あるいは q : 切欠き感度係数、α : 弾性応力集中係数。すなわち、η = 1 のとき、β = α で切欠きの応力集中係数と等しく疲労限度が低下することになり、η = 0 のとき、β = 1 で疲労限度は切欠きの影響を全く受けないことになる。ただし、形状が相似で α が等しいもの同士の η を比較しても、寸法や材料の影響で η の値は変わるため、性質的には η は β と同じもので、η 自体に特別な物理的意味は無い。 切欠き係数の傾向として、α が小さい場合は β = α に近いが、α が大きい場合は β < α となり、さらに α がある程度以上大きくなるとαの大きさに関わらず β は一定値を取るようになる。β = α とならない大きな理由は、切欠き材の疲労限度が切欠き底の最大応力 σmax のみでなく、切欠き底から材料内部に向かっての応力分布がどのように変化するかも影響しているためである。すなわち、σmax が同じでも、切欠き底から材料内部に向かって急激に応力が減少する場合と緩やかに減少する場合とでは、材料が受ける負担が異なる。α が小さい切欠きは応力減少が緩やかな場合が多いので、材料が受ける負担が大きく、β = α に近くなる。対して、α が大きい切欠きは応力減少が急激な場合が多いので、σmax に比して材料が受ける負担が小さく、β < α となる。このような切欠き底の応力分布の強弱を代表するために、切欠き底の最大応力の点における応力分布の傾きχが用いられる。χ を切欠き底の応力勾配(stress gradient)と呼ぶ。 α がある程度以上大きくなると α の大きさに関わらず β は一定値を取る傾向を示す。このような条件下では、疲労限度下の応力で繰返し負荷後に、切欠き底に 1 - 0.1 mm の巨視的な停留き裂(non-propagating crack)が確認される。すなわち、α が大きい鋭い切欠きでは、巨視的なき裂の進展・停留の有無により疲労限度が決まっている。詳細な実験結果によると、このような疲労限度の分岐は、応力集中係数 α ではなく、応力勾配 χ、あるいは切欠き底の最大応力切欠き半径 ρ により決まると考える方がより正確である。また、西谷によると、荷重形式(曲げ・引張、平均応力の有無など)が同じだとすれば、分岐点となる ρ の値は材料定数となる。
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