履歴と現状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 08:56 UTC 版)
「タイフーン型原子力潜水艦」の記事における「履歴と現状」の解説
一番艦TK-208は、後にロシアの英雄に因み「ドミートリー・ドンスコイ」と命名された。941 設計は6隻建造され、R-39(SS-N-20 Sturgeon)潜水艦発射弾道ミサイルを20基備える世界最大の潜水艦であったが、財政難によりすでに5隻が退役し、TK-208は、1992年以降改装工事に入り、新型潜水艦発射弾道ミサイル3M14ブラヴァー(Bulava)(SS-NX-30)のテストプラットフォームとなるための改造を施され、2003年に工事を完了し、2005年9月、ブラヴァーの発射テストに成功した。なお、ブラヴァー試験艦に改造されて以降は941U 設計、941UM 設計と呼ばれる。 ソビエト連邦の崩壊後も、ロシア海軍は本型と667BDRM 設計(デルタIV級)を維持する方針であったが、極度の財政難により、維持運用に多大な費用が掛かる本型のようなマンモス原潜は、ロシア海軍の手に余る存在となった。 加えて、主要コンポーネントである第1段ロケットをウクライナで生産していた搭載ミサイルのR-39は、ソ連崩壊で製造が途絶え、1990年代以降、寿命が尽きる事が予測された。代替となるR-39UTTkhバルクの開発も1998年には中止され、941 設計は搭載ミサイルの供給を絶たれる事になった。 1990年代末期以降、3隻の941 設計が除籍された。これらの退役艦は、衛星打ち上げロケットの洋上プラットフォームや運送船への転用がルビーン設計局より提案されたが、結局解体された。解体工事の資金は米国から援助された。残る3隻も現役を退くのは時間の問題と見られていたが、元首相のセルゲイ・ステパーシンは、残る3隻を現役に留める為、率先して活動を行ない、3隻の除籍を食い止めた。 TK-17「アルハンゲリスク」は、2004年初頭に行われた戦略原潜のミサイル発射演習においてプーチン大統領が乗艦し、演習を視察した。もっとも、この時のミサイル発射は全て失敗した。 2008年12月、ロシア海軍総司令部は、予備役のTK-17、TK-20の2隻を巡航ミサイル搭載艦あるいは機雷敷設艦、もしくは特殊作戦用に改装する構想が有る事を明らかにした。 2009年6月26日、ロシア海軍総司令官ウラジーミル・ヴィソツキーは、3隻の941 設計が、今後もロシア海軍の編制に留まり続けると記者団に伝えた。 2011年12月、ルビーン設計局取締役アンドレイ・ジャチコフは、TK-208をブラヴァー試験艦からボレイ級の試験艦として運用すると明らかにした。 2013年6月、ボレイ級及びヤーセン級の試験のため、TK-208が出航した。 3隻の941 設計は、書類上はザーパドナヤ・リーツァの第18潜水艦師団に所属していたが、実際には、3隻ともセヴェロドヴィンスクに回航されており、TK-17、TK-20の2隻は同市の白海海軍基地に係留され、TK-208は、セヴマシュ造船所の係留所に居る。 2016年、TK-17とTK-20の2隻の解体が決定されたが、TK-17は2015年に解体が始まっている。ロシア軍需産業筋によると、唯一就役中の「ドミートリー・ドンスコイ」は2020年まで運用される予定である。
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