小アイアース
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/15 17:51 UTC 版)


小アイアース(古希: Αἴας, Aiās, ラテン語: Ajax)は、ギリシア神話に登場する人物である[1]。長母音を省略して小アイアス[2]とも表記する。
ロクリスの民(ロクロイ / Lokroi)の王。ロクリス王オイレウスとエリオーピスの子。異母兄弟にメドーンがいる。トロイア戦争にはロクリス人を率いて40隻の船と共に参加した[3]。テラモーンの子アイアース(大アイアース)と区別するために小アイアースと呼ばれる[4]。小柄だがアキレウスに次ぐ駿足であり、大アイアースと組にして両アイアース (古希: Αἴαντες)などと呼ばれる。
彼は神を敬わない不遜な人物として描かれる。『ビブリオテーケー』によればトロイア陥落に際して、アテーナーの像に抱きついていたカッサンドラーを強姦した。アテーナー像が上を向くようになったのは、この時の場面を見るのを嫌ったからであるという[5]。またパウサニアース『ギリシア案内記』やエウリーピデース『トロイアの女』ではアテーナー像ごと押し倒したとしており、さらにアテーナーを激怒させている。ギリシア軍が帰還しようとすると、予言者であるカルカースがアテーナーが怒っていることを告げた。初めてアイアースの蛮行を知ったギリシア人たちはアイアースを殺そうとしたが、彼が祭壇に逃れたため果たせなかった[6]。
遺骸はミコノス島に打ち上げられ、それをテティスが葬ったとされる[7]。
アイアースの末路については『オデュッセイア』が伝える[8]。アテーナーの怒りを買ったアイアースは女神アテーナーが送った嵐で帰途の航海中に難破するが、一時は海神ポセイドーンに救われて岩礁に乗り上げる。しかしそこで、神の怒りも自分には及ばないと勝ち誇ったため、ポセイドーンが三叉の矛を投げつけて岩礁を打ち砕き、彼は溺死した。
その後も女神の怒りは解けず、ロクリスの人々は毎年、名門百家から若い未婚の女性を2人ずつトロイアのアテーナー神殿に送らねばならなかった。女性2人は船で海を渡り、殺そうとするトロイア人の手から同行した護衛により神殿へ逃れることが出来れば命だけは助かるが、辱めを受けながら一生を独身で過ごさねばならなかった。この習慣は紀元前800年頃から紀元100年頃までと1000年近く続いた。
脚注
- ^ 松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年、1,2頁。
- ^ 水谷智洋、平凡社、改訂新版 世界大百科事典『アイアス』 - コトバンク
- ^ 『イーリアス』2巻527行-535行。
- ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店、1960年。ISBN 9784000800136。2頁。
- ^ アポロドーロス、摘要(E)5・22。
- ^ アポロドーロス、摘要(E)5・23。
- ^ アポロドーロス、摘要(E)6・6。
- ^ 『オデュッセイア』4巻499行-511行。
参考文献
固有名詞の分類
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