安芸灘とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 安芸灘の意味・解説 

あき‐なだ【安芸灘】

読み方:あきなだ

広島県南西部山口県南東部愛媛県北西部の間の海域瀬戸内海一部東西45キロメートル南北30キロメートル平均深度36メートル。東が倉橋島・上蒲刈(かみかまがり)島・下蒲刈島大崎下島南東愛媛県高縄半島区切られる本州四国を結ぶ航路いくつもあり、船の交通量の多いところ。漁業も盛ん。東部を斎(いつき)灘という。


安芸灘

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/31 01:09 UTC 版)

安芸灘(あきなだ)は、瀬戸内海西部に位置する海域である。

地理

周防大島から望む安芸灘

下記、瀬戸内法の範囲によると、安芸灘は面積 744 km2 、平均水深 39.9m、容積 297 億m3。[1]

範囲

瀬戸内法(瀬戸内海環境保全特別措置法)によると瀬戸内海を12(別の法律では豊後水道北部、響灘を除いた10区分とすることもある。)に区分した海域の一つ[注釈 1]。その区分に拠れば、安芸灘は燧灘の西、伊予灘の東、広島湾の南になる。具体的には東端は来島海峡、西端は倉橋島怒和島を結ぶ線と釣島海峡興居島中島 (愛媛県)の間)、北は芸予諸島のうち関前諸島以西の島々、南は興居島と四国との間の線になる[注釈 2]斎灘を丸ごと含むことになる。
ただし、上記の12区分による「広島湾」(10区分の場合も同じ)は一般的に理解されている広島湾(狭義、厳島江田島とを結んだ線より北)よりかなり広い概念であり、広島湾南部または西部と呼ばれている岩国市沖海域も含むことに注意が必要である。上記の12海域区分では、岩国市沖は安芸灘には含まず広島湾に含むことになる[2]
一方、広義には、
  • 岩国市沖の広島湾西部地域(具体的には、狭義の広島湾口-本州-屋代島-忽那諸島怒和島-倉橋島を結ぶ範囲)南北50 km、東西30 kmの狭いエリア
  • 安芸灘群島(蒲刈群島・下大崎群島)と本州との間の海域
を含む(国土地理院の地形図(Web公開版)上にもその表記がある[3][注釈 3])。

地形・潮流

平均水深は約40メートルであり[4]海底地形は凹凸が多く、燧灘の潮の干満によって潮流が比較的に速い[4]。(引用元からここでいう安芸灘は瀬戸内法上の範囲)

流入河川

大きな河川はない。

安芸灘断層帯

※ここでいう安芸灘とは広島湾西部を指すことに注意が必要である。
今後30年以内に地震が発生する確率の高いSランクの断層として「安芸灘断層帯」がある[5]2001年(平成13年)3月24日にはマグニチュード6.9の芸予地震が発生し、広島市呉市今治市で家屋の損壊など多数の被害を出した。近辺は南海トラフフィリピン海プレートに向かって沈み込む位置の北端付近にあり、古くから地震活動が盛んである[6]

自然環境

山陽本線列車内より望む安芸灘

芸予諸島なども含めた沿岸部は、現在の瀬戸内海でも比較的に自然の海岸が多く残されている[4][7]。そのため、干潟[注釈 4]アマモ藻場[注釈 5]も残存している[4]藻場の面積は現在の瀬戸内海でも特筆すべきであり、伊予灘からの流入水と共に一帯の水質の浄化(透明度の向上)に貢献している[8]。その一方で、干潟は比較的に少ないとされている[9]

これらの恩恵を受ける生物も多く[8]カタクチイワシシラスなどの水産資源に富み[4]タイサワラなどを漁獲する延縄漁が知られる。牡蠣の養殖も盛んである[4]呉市の「アビ渡来群遊海面」[10]や、備後灘ではあるが隣接する竹原市阿波島の「スナメリクジラ廻游海面」[11]天然記念物に指定されており[9]、同じく竹原市の吉名町[9]や(やはり備後灘に該当するが隣接する)賀茂川の河口の「ハチの干潟」はカブトガニなどの多様な生物にとって重要な生息地になっている[12]

しかし、スナメリは20世紀の下旬に安芸灘から播磨灘の範囲で著しく減少したとされており[13]、上記の阿波島でも見られる機会は非常に少なくなったとされている[14]。また、イカナゴ[14]エビ貝類ナマコ[9]など漁獲量の減少が長期的にみられるなどの問題点も点在する[4][8][15]

一方で、伊予灘との境界に位置する防予諸島には現在でもスナメリの生息や世界最大級のニホンアワサンゴの群生地が存在するなどエコツーリズムに適した自然環境が残されており、スナメリウォッチングバードウォッチングなども試験的に行われている[16]。また、倉橋島の周辺などではカンムリウミスズメ[17]ニホンウナギなどの貴重種も確認されている[18][19]

なお、芸予諸島伊予灘の事例からも[20]、かつては安芸灘もヒゲクジラ類回遊に利用されていた可能性がある。

沿岸都市

(北から時計回りに)呉市、今治市、松山市
(広義では、同じく)柳井市、岩国市、大竹市、江田島市

海上交通

本州九州四国を結ぶ航路が幾つも重なり、また関門海峡を経由し東アジア諸国と結ぶ国際航路でもあり、瀬戸内海でもとりわけ船舶通航量の多い海域である。

海域利用

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 瀬戸内海全体の海域区分についてはその法的根拠も含めて瀬戸内海#海域に詳しい。
  2. ^ 詳細な境界は、環境事務次官から各瀬戸内海関係府県知事・各政令市長あて通達「瀬戸内海環境保全臨時措置法第13条第1項の埋立についての規定の運用に関する基本方針について」(公布日:昭和49年06月18日付環水規127号)の「別図1 瀬戸内海ブロック分割図」に備考として記載されている。これによると、東端は大角鼻―大下島南端―岡村島観音崎―御手洗港防波堤灯台、大崎下島西端―上蒲刈島黒鼻、上蒲刈島串崎から270°の線 下蒲刈島白崎―重岩灯標の線。南端は白石鼻―興居島神崎、興居島這磯鼻―中島スノ鼻 中島部屋ノ鼻―怒和島風切鼻の線。西端は怒和島風切鼻―倉橋島南端、音戸大橋の線。
  3. ^ Googlmapでも安芸灘の代表点として岩国沖が表示される。2024/8/30確認。
  4. ^ 呉市倉橋島など。
  5. ^ 今治市松山市中島など。

出典

  1. ^ 環境省「瀬戸内海の環境情報」- 自然環境に関する情報 - 瀬戸内海の概況 より [1]
  2. ^ 広島湾の範囲については 「広島湾再生推進会議」の資料(事務局・国土交通省中国地方整備局)https://www.cgr.mlit.go.jp/chiki/hiroshimawan/what/index.html に地図がある。
  3. ^ 両方とも2024/8/30確認
  4. ^ a b c d e f g 環境省, 8 安芸灘
  5. ^ 安芸灘断層群
  6. ^ ウェザーニュース, 震度6弱の芸予地震から今日で20年 同様の地震は今後も繰り返し発生か
  7. ^ 瀬戸内海底層堆積物調査(藻場由来有機物探査調査)
  8. ^ a b c 山本民次, 水野健一郎, 高島景, 山本裕規「特集 瀬戸内海の新たな課題と取り組み -- 広島湾・安芸灘・伊予灘」(PDF)『瀬戸内海 : 瀬戸内の自然・社会・人文科学の総合誌』第62号、瀬戸内海環境保全協会、2011年、4-25頁、CRID 1523388081033931776 
  9. ^ a b c d 瀬戸内海の環境データベース, 2007年, 湾灘別の環境特性及び課題特性一覧, 国土交通省
  10. ^ 呉市, 2015年11月01日, あび渡来群游海面
  11. ^ 竹原市, 2022年01月14日, スナメリクジラ廻游海面
  12. ^ 杉浦奈実, 2021年11月20日, 「カブトガニもぞもぞ、90年ぶりの快挙も 瀬戸内海本来の姿残す干潟」, 朝日新聞
  13. ^ 近藤茂則, 神田育子, 石田義成, 鍋島靖信「大阪湾におけるスナメリの分布と密度」『哺乳類科学』第50巻第1号、日本哺乳類学会、2010年、13-20頁、 CRID 1390001204724361344doi:10.11238/mammalianscience.50.13ISSN 0385437X 
  14. ^ a b スナメリ”. 広島県立忠海高等学校. 2024年1月18日閲覧。
  15. ^ 環境省, 安芸灘, 7-29頁
  16. ^ エコツアーサイト 防予諸島
  17. ^ カンムリウミスズメのエコツアー@倉橋島
  18. ^ レッドデータブックくれ - 呉市の絶滅のおそれのある野生動植物
  19. ^ 沿岸域 13701 倉橋島東部沿岸”. 環境省. 生物多様性の観点から重要度の高い海域. 2024年1月8日閲覧。
  20. ^ 村上晴澄「今川了俊の紀行文『道ゆきぶり』にみる鯨島 : 瀬戸内海におけるクジラの回遊」(PDF)『立命館文』第666号、立命館大学人文学会、2020年3月、1308-1294頁、 CRID 1520572357186344448ISSN 02877015 




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「安芸灘」の関連用語

安芸灘のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



安芸灘のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの安芸灘 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS