安全面における革新
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/01/07 16:58 UTC 版)
チェルノブイリ原子力発電所や福島第一原子力発電所での炉心溶融事故を受けて、発電所の建設および維持管理の改善が強く求められるようになった。これらの事故は原子炉建屋の貧弱な封じ込め構造によるものであり、国際原子力機関は再発防止のため原子力施設に関する諸手続きを強化することになった。炉心溶融事故において保安上の最優先項目は放射性物質の封じ込めであり、最も効果的かつ原子力施設で広く採用されている手法が深層防護(英語版)である。改良型重水炉は放射性物質を炉心に封じ込めるために必要な運転規則および設備を備えることで深層防護を実現している。深層防護はヒューマンエラーや機器の誤動作による事故の可能性を低減するための運転規則も規定している。 深層防護のレベルは以下のように定められている。 防護レベル目的目的達成に必要な手段関連するプラント状態プラントの当初設計 レベル 1 異常運転や故障の防止 保守的設計及び建設・運転における高い品質 通常運転 レベル 2 異常運転の制御及び故障の検知 制御、制限及び防護系、並びにその他のサーベイランス特性 通常時の異常な過渡変化(AOO) レベル 3 設計基準内への事故の制御 工学的安全施設及び事故時手順 設計基準事故(想定単一起因事象) 設計基準外 レベル 4 事故の進展防止及びシビアアクシデントの影響緩和を含む、過酷なプラント状態の制御 補完的手段及び格納容器の防護を含めたアクシデントマネジメント 多重故障シビア・アクシデント(過酷事故)[設計拡張状態] 緊急時計画 レベル 5 放射性物質の大規模な放出による放射線影響の緩和 サイト外の緊急時対応 改良型重水炉はウランの使用量を低減してトリウムに置き換えることにより再生可能エネルギーの安全性に革新をもたらすものである。トリウムの原子力エネルギーを利用することで、地球上の石油・石炭・ウランを合わせたよりも多くのエネルギーを得ることができる。改良型重水炉は既存の原子炉より抜きん出た安全機能 - 炉心に組み込まれた冷却系による熱除去、複数用意されたシャットダウン機構、故障時に核毒を利用してシャットダウンするフェイルセーフ機構 - を備えている。核分裂の熱による高温・高圧は化学反応や核分裂そのものを加速するため、熱の蓄積を防ぐ取り組みが重要となる。改良型重水炉では反応度係数を負にし、炉心の出力密度と反応余裕度を低くすることおよび適切な材料を選択することで熱の蓄積が起きる可能性を低減している。
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