委員候補に対する聴聞会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/23 01:48 UTC 版)
「バローゾ委員会」の記事における「委員候補に対する聴聞会」の解説
バローゾはドイツの連邦首相ゲアハルト・シュレーダーの "super commissioner" 構想を拒否したうえで、委員の3分の1を女性とし、また強力な権限を持つ担当の委員を大国出身ではなく能力面でもっともふさわしい人物に割り当てようと考えた。バローゾによる担当職域の割当は国の大小で平等に行なわれ、このことによりバローゾは一定の評価を得ることができた。各加盟国政府から委員候補が提示され、2004年9月27日から10月11日までのあいだ、欧州議会は各候補の適性を判断するために聴聞会を開いた。 聴聞会において複数の委員候補に問題が浮上した。聴聞会に出席した議員が税制・関税同盟担当候補のイングリーダ・ウードレ、エネルギー担当候補のラースロー・コヴァーチ、競争担当候補のネリー・クルース、農業担当候補のマリアン・フィッシャー=ボエルの適性に疑問を持ったのである。なかでもとくに問題となったのが司法・自由・安全担当のロッコ・ブッティグリオーネで、既婚女性の地位にかんするものや同性愛を罪とする保守的な発言に対して、一部の議員から欧州連合における市民の権利を保護する職に就く人物として不適切であるとされ、欧州議会の市民権委員会において次期委員とすることが反対された。 欧州人民党・欧州民主主義グループはバローゾ提案の新委員会人事を支持したが、欧州自由民主同盟では意見が分かれ、欧州社会党グループはバローゾに対してもっとも批判的であった。バローゾは欧州議会に対して譲歩を小さく抑えようとしたが、欧州社会党グループが新委員会承認に反対することを明らかにしたことで譲歩が受け入れられず、バローゾ委員会が欧州連合の歴史ではじめて欧州議会によって拒否される欧州委員会となるかどうかということが分裂状態の欧州自由民主同盟の動向にかかることとなった。欧州人民党はブッティグリオーネをはずすことになった場合には、均衡を図るために欧州社会党からの委員候補を1名はずすよう要求した。 結局バローゾは委員会人事案を断念して撤回し、プローディ委員会を暫定委員会として引き続き日常業務のみにあたらせ、3週間後に代替案を提示した。代替案では3点の変更があり、これによってバローゾの傷ついた権威を取り戻し、欧州議会の承認を得ることに成功した。この代替案ではブッティグリオーネの候補案がイタリア政府によって取り下げられ、かわりに外相のフランコ・フラッティーニを候補とすることとされた。またエネルギー担当候補としていたラースロー・コヴァーチを課税・関税同盟担当候補にし、イングリーダ・ウードレにかわってアンドリス・ピエバルグスをエネルギー担当委員候補とした。 それでもなお独立と民主主義グループ共同代表のナイジェル・ファレッジからジャック・バロについての異論が持ち上がった。バロは委員としては再任となり、新委員会では運輸を担当する副委員長に指名されていたが、2000年に所属政党がかかわる政治資金の不祥事で執行猶予つきの有罪判決を受けていたのである。バロはただちに大統領ジャック・シラクから恩赦を受け、またバローゾも欧州議会で取りあげられるまでバロの有罪判決の事実を知らなかった。しかしながらバローゾは適任であるとしてバロを擁護した。ファレッジはまた副委員長候補のシーム・カラスについても過去に汚職の犯罪歴があることを指摘して異議を唱えた。ただしカラスに対する嫌疑は不適切な新聞記事に基づく虚偽であることが判明し、謝罪がなされている。 ファレッジが異論を挟んだものの、新委員会は主要3会派の支持を得て2004年11月18日に欧州議会で賛成449、反対149、棄権82で承認され、11月22日に本来の予定よりも3週間遅れでバローゾ委員会が発足した。
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