大企業との癒着問題とスタッフへの高額報酬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 08:31 UTC 版)
「世界自然保護基金」の記事における「大企業との癒着問題とスタッフへの高額報酬」の解説
ドイツ人ジャーナリストであるヴィルフリート・ヒュースマン(ドイツ語版)は2012年、世界各地での取材に基づき、WWFの暗部を告発する著書『WWF黒書―世界自然保護基金の知られざる闇』を出版した。この本によれば、WWFはモンサントやコカコーラ、シェブロンなどの世界的な多国籍企業から巨額の資金援助を受けており、それらの大企業の利益のために、自然保護よりもむしろ自然破壊に関与しているという。大企業との癒着についてはこの『WWF黒書』以外にも、シュピーゲル紙などのメディアも批判している。すなわち、WWFは大企業に対して「莫大な寄付金と少量の譲歩」と引き換えに自然破壊の許可を与えており、「自然環境よりも企業を守っている」と言われる。 また『WWF黒書』によれば、一般市民や企業からの寄付金の使途について、WWFは、その8%を管理費用に使い、他の多くの部分を活動費(project expenses)等に使用していると称している。しかしこの「活動費」の中には、有給スタッフの人件費が隠されている。実際には、WWFは5,000人もいる正規スタッフへの給与だけで寄付金の50%を食い尽くしており、特に幹部クラスの報酬は非常に高い。例えば米国では、WWFの最高幹部への年間報酬は、大統領の俸給40万ドルを上回る50万5000ドル(約6,000万円)にものぼる。 WWFは『WWF黒書』に対して発売差し止め訴訟を行ったが、結局差し止めはできず、一部WWF側の主張に応じた修正を経た上で、ドイツ語版の他、英語訳・日本語訳などが出版された。 WWFはウェブ上に『WWF黒書』への反論を掲載しており、その元となったドキュメンタリー番組には、事実の明らかな誤り、バランスを欠いた記述や誤訳があるという。たとえば大企業との癒着問題については、シェル、BP及びモンサント社からの支援は受けていない、としている。しかし他の大企業から資金援助を受けていることは認めており、そのようにして大企業と「協力」することにより、「世界の企業活動や経済、消費活動を変革」し、自然や環境を守ることができる、とWWFジャパンは主張している。なお、この反論の中で、WWFは「明確なルールとして、化石燃料を主なビジネスとしている企業からの寄付を受け付けていない」としているが、2016年現在、WWFジャパンの顧問には木村康・石油連盟会長や中村恒明・東京ガス環境部部長が名を連ねている。また大阪ガスは1983年から継続して支援を行っていることでWWFジャパンから感謝状を授与されており、上記の「明確なルール」とは矛盾する(シュピーゲル紙によれば、「自分の作った基準を自分で破ること」はWWFの常套手段であり、そのような基準のいい加減さによって、WWFは産業界から巨額の資金援助を引き出しているという)。 また『WWF黒書』で示された上述の資金の使途とスタッフへの高額報酬問題については、WWF側からの反論は見られない。
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