基本的なモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/26 10:23 UTC 版)
「マンデルフレミングモデル」の記事における「基本的なモデル」の解説
マンデルフレミングモデルは、IS-LMモデルに海外部門を入れて拡張したものであるので、価格調整が不完全な短期モデルである。マンデル=フレミング・モデル分析が当てはまる場合、おおむね短期では1年、長期で数年のタイム・スパンであると考えられている。比較的短期の場合、賃金・価格は大きな誤差は生じず、固定されていると考えられるため、ケインズ経済学に基づくモデルが採用され、総供給は完全弾力的であって、現実の産出量は総需要によって決定される。 マンデルフレミングモデルは、次の3つの方程式から構成される。 Y = C ( Y ) + I ( r ) + G + X ( e ) − e M ∗ ( e , Y ) {\displaystyle Y=C(Y)+I(r)+G+X(e)-eM^{*}(e,Y)} ≪IS曲線≫ M = L ( r , Y ) {\displaystyle M=L(r,Y)} ≪LM曲線≫ X ( e ) − e M ∗ ( e , Y ) + F ( r − r ∗ ) = 0 {\displaystyle X(e)-eM^{*}(e,Y)+F(r-r^{*})=0} ≪国際収支の均衡条件(BP曲線)≫ 但し、 Y:実質所得 C:実質消費支出 I:実質投資支出 G:実質政府支出 X:実質輸出 M*:外貨建て実質輸入 r:国内金利 r*:外国金利 e:邦貨建て為替レート(なお、貿易は実質為替レートeP*/Pに依存するが、自国物価Pと外国物価P*を硬直的、かつP=P*=1とする) M:貨幣供給量 L:貨幣需要量 X(e)-eM*(e,Y):純輸出(あるいは貿易収支、もしくは経常収支) F:資本収支 また、(3)について、「小国の仮定」(資本移動の利子弾力性が無限大)、すなわち資本移動が完全に自由であることを仮定すれば、(3)は単に r = r ∗ {\displaystyle r=r^{*}} とおくことができる。また、カバーなし金利平価説を組み込むのであれば、(3)を r = r ∗ + E [ e ] − e e {\displaystyle r=r^{*}+{\frac {E[e]-e}{e}}} このような式にすることができる。ただし、E[e]:予想(直物)邦貨建て為替レート。なお、E[e] = eという静学的期待を仮定すると、通常のマンデルフレミングモデルと同じ結論が得られる。資本移動性の程度が、マンデル=フレミング・モデルにおいて重要な役割を果たすのである。 ≪IS曲線≫では、財市場における均衡に加えて、経常収支が勘案される。また、自国の経済規模が相対的に小さいので、経済活動が外国の経済活動に大きな影響を与えることはないという小国の仮定を用いている。現実の経済において、日本やアメリカなど大国の経済活動が世界に影響を与えているが、金利に関しては資本がグローバルに大量移動する時代には、金利は国内事情だけで決まるわけではなく、世界の金融市場の影響を受けるため、小国の仮定は妥当である。 比較的短期の政策効果の分析に用いられるマンデル=フレミング・モデルには、 開放小国の短期の政策効果を分析するために構築されている IS-LMモデルの開放経済版であり、経常(貿易)収支と資本収支の決定式を含んでいる 経常収支は、内外の産出量・為替レートで決定されると仮定されている一方で、資本収支は、自国と他国の金利格差によってのみ決定されると仮定されている という特徴がある。 マンデル=フレミング・モデルは、ある意味で非常に制限的な諸仮定のもとに構築されているため、このモデルで経済政策の効果を考察する際には、十分な注意が必要である。 マンデル・フレミング・モデルは、開放経済モデルとしては重大な問題を抱えており、為替レートを無視して金利のみで資本移動が起こるという仮説は間違いであるが、その後のマンデルの後継者たちによってこうした欠点は修正されている。
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