同時対角化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/02/09 04:23 UTC 版)
「ヒルベルト空間上のコンパクト作用素」の記事における「同時対角化」の解説
あるヒルベルト空間 H(例えば、有限次元空間 Cn)と、自己共役作用素からなるある commuting set を考える。このとき、適切な条件下で、同時(ユニタリ)対角化を行うことが出来る。すなわち、それらの作用素の共通の固有ベクトルからなる正規直交基底 Q が存在する。式で表すと、 となる。 補題: 内のすべての作用素はコンパクトであると仮定する。このとき、すべての閉かつ非ゼロな -不変部分空間 S ⊆ H には、 に対して共通の固有ベクトルが存在する。 証明(補題): ケース I:すべての作用素がちょうど一つの固有値を持つ場合。このときは、単位長の任意の が共通の固有ベクトルとなる。 ケース II:少なくとも二つの固有値を持つある作用素 が存在する場合。このときは とすれば、T のコンパクト性と α ≠ 0 であることから、 は有限次元(したがって閉)非ゼロ -不変部分空間となる(なぜならば、作用素はすべて T と交換され、 および に対して が成立するからである)。特に、 が必ず得られる。したがって、次元についての帰納法により、 は に対して共通の固有ベクトルを持つことを前もって議論することが可能であった。 (補題) 定理 1: 内のすべての作用素がコンパクトであるなら、それらは同時(ユニタリ)対角化可能である。 証明(定理 1): 包含関係によって半順序付けられる an orthonormal set of common eigen vectors for を考える。これは明らかにツォルンの性質を持つ。したがって Q を極大元としたとき、Q がヒルベルト空間 H の全体に対する基底であるなら、証明は完成される。もしそうでないなら、 とすることで、これは -不変な非自明閉部分空間であることが簡単に分かる。したがって、上述の補題により、作用素に対する共通の固有ベクトルがそこに存在しうることがわかる(必ず Q に直交する)。しかしその場合、P 内に Q の真の拡張が存在することとなり、これは極大性に矛盾する。 (定理 1) 定理 2: 内にある単射のコンパクト作用素が存在するなら、その作用素は同時(ユニタリ)対角化可能である。 証明(定理 2): コンパクトな単射 を固定する。このとき、ヒルベルト空間上のコンパクトな対象作用素のスペクトル理論により、次式を得る。。ここで は離散的な可算集合で、すべての固有空間は有限次元である。 は commuting set であるため、すべての固有空間は不変となる。その(有限次元の)固有空間に制限された作用素はすべてコンパクトであるため、それらの各々に定理 1 を適用することが出来、 に対する正規直交基底 を見つけることが出来る。 は対称であるため、 は(可算)正規直交集合である。また、はじめに述べた分解により、それは H の基底でもある。 (定理 2) 定理 3: H を有限次元ヒルベルト空間とし、 を作用素の可換集合で、各々の作用素が対角化出来るようなものとする。このとき、それらの作用素は同時対角化可能である。 証明(定理 3): ケース I: すべての作用素がちょうど一つの固有値を持つ場合。このときは、H の任意の基底に対して成立する。 ケース II: 少なくとも二つの固有値を持つ作用素 を固定し、 が対称作用素となるように を定める。今 のある固有値を α とする。このとき、 および が非自明な -不変部分空間であることが容易に分かる。次元についての帰納法により、その部分空間には線型独立な基底 が存在し、それらは 内の作用素がその部分空間上で同時対角化可能であることを示すものとなる。すると明らかに は 内の作用素が同時対角化可能であることを示すものとなる。 (定理 3) ここで証明には行列の手法を直接使う必要が無かったことに注意されたい。それらの手法を使う別の証明も存在する。 上の定理を、すべての作用素が単にそれらの随伴作用素と可換である場合に拡張することも出来る。この場合、対角化における「直交」という語を取り除くこととなる。ワイル=ピーターによる表現から生じる作用素に対する、より弱い結果も存在する。G をある固定された局所コンパクトなハウスドルフ群とし、定数倍の不定性を除いて一意な G 上のハール測度に関する自乗可積分な可測関数の空間 を定める。連続なシフト作用 を考える。ここで とする。このとき、G がコンパクトであるなら H のある有限次元の既約な不変部分空間の可算直和への分解が唯一つ存在する(これは本質的には作用素の族 の対角化である)。G がコンパクトでないが、アーベルである場合には、対角化は達成されない。しかし、H の 1-次元不変部分空間への「連続な」分解が唯一つ存在する。
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