同時代の反響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/18 00:38 UTC 版)
公刊直後から、『水源』に対する批評家たちの態度はニ極化し、賛否入り混じったレビューが発表された。「ニューヨーク・タイムズ」(The New York Times)紙には、ランドを「きらびやかに、美しく、痛烈に」書く「すばらしい力を持つ作家」と呼び、「これは個人を称揚する賛歌である。〔……〕この偉大な作品を読めば、我々の時代における基本的な概念のいくつかについて考え抜かずにはいられないだろう」と評するレビューが掲載された。「ニューヨーク ジャーナルアメリカン」(New York Journal-American)誌のコラムニスト、ベンジャミン・デカッサーズ(Benjamin DeCasseres)は、主人公ロークは「妥協しない個人主義者」で、「現代アメリカ文学の中で最も読者を鼓舞するキャラクターの一人」であると書いた。ランドはデカッサーズに手紙を書き、他の多くのレビューアーがこの小説の主題に触れない中、デカッサーズがこの小説の主題が個人主義であることを説いてくれたことに礼を述べた。他にも肯定的なレビューはあったが、ランドはそれらの多くを、自分のメッセージを理解していない、もしくは掲載紙誌がマイナーであるとして、無視した。否定的なレビューのいくつかは、この小説の長さを批判していた。たとえばあるレビューアーはこの小説を「本の鯨」と呼び、別のレビューアーは「この小説に入れ込む人間には、紙の配給に関する厳しい授業を受けさせる必要がある」と書いた。登場人物に同情心がないと批判するレビューアーや、ランドの文体を「不快なほど単調」と批判するレビューアーもいた。 『水源』が出版された1943年には、イザベル・パターソンの『機械の神』(The God of the Machine)、ローズ・ワイルダー・レイン (Rose Wilder Lane)の『自由の発見』(The Discovery of Freedom)も出版された。これらの作品の出版により、ランド、レイン、パターソンの3人はアメリカのリバタリアン運動の母と呼ばれてきた。たとえばジャーナリストのジョン・チェンバレン(John Chamberlain)は、自分が社会主義を捨て、リバタリアン思想と保守思想の「古きアメリカ思想」に最終的に転向したのは、これらの作品を読んだからであると述べている。 アメリカの黒人児童文学作家ヴァージニア・ハミルトンの『ジュニア・ブラウンの惑星』 (1971)』は『水源』のパロディになっている。
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