同性結婚との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 04:20 UTC 版)
「日本国憲法第24条」の記事における「同性結婚との関係」の解説
詳細は「日本における同性結婚」を参照 日本国憲法第24条では婚姻について「両性の合意」や「夫婦」という文言があるが、日本で同性結婚が認められていない現状が違憲であるかどうか判断を行った裁判はまだなく、2019年2月14日に同性婚を求める13組の同性カップルが国を相手取り一斉に提訴したのが初めてである。 2021年3月現在も係争中であるが、他の地域に先駆けて2021年3月17日に札幌地方裁判所で判決が言い渡された。この判決では、「憲法24条1項は異性婚について定めたものである」とした。また、同条2項は具体的な制度構築を立法府の裁量に委ねたとする。このことから、婚姻に関する民法、戸籍法の規定が同性婚を想定していないことが直接的に憲法24条に違反するものではないとの判断を下し、原告の主張を全面的に棄却した。その一方で、この判決では「婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは,立法府の裁量権の範囲を超えたものであって,その限度で憲法14条1項に違反する」とした。 憲法学者の木村草太は、憲法24条1項は「異性婚」が両性の合意のみに基づいて成立することを示しているにすぎず、同性婚を禁止した条文ではないと主張している。 一方で、1998年の時点では、憲法24条1項に「両性の合意」「夫婦」という文言があることから、憲法学者の君塚正臣は、同性結婚は憲法の想定されたものではなく憲法問題と認められずに棄却されると推測している。 自身が同性愛者であることを公表している市民活動家の明智カイトは、司法関係者の間に「憲法を改正しなければ、同性婚は法的に成立しない」という意見があると述べている。一般社団法人平和政策研究所によると、憲法は「結婚が男女間で行われることを前提」とし「同性婚を認めていない」とする解釈が「現在の憲法学界の主流派解釈」であるという。過去には青森県で憲法24条の規定を理由に同性婚の届出が却下されたこともあった。法学者の植野妙実子は憲法24条を根拠に同性婚違憲論を唱え、憲法学者の八木秀次も憲法の規定は「同性婚を排除している」と主張し、弁護士の藤本尚道も「明確に『両性の合意のみ』と規定されていますから、『同性婚』は想定されていないというのが素直な憲法解釈でしょう」と述べている。法学者の辻村みよ子は憲法24条の規定が「『超現代家族』への展開にブレーキをかけうる」として同性婚合法化の障壁になっているとの見解を示している。 弁護士の濵門俊也は、憲法24条で規定されている「婚姻」には同性婚が含まれず、憲法は同性婚について何も言及していないため、同性婚の法制化は憲法上禁じられていないと考察している。また、憲法第14条を根拠に同性婚を認めるべきだという見解も存在する。セクシュアル・マイノリティの問題に取り組む弁護士・行政書士・司法書士・税理士・社会保険労務士などで構成するLGBT支援法律家ネットワークは、2015年12月、「『憲法24条1項は同性婚を否定していない』というのが憲法の趣旨や制定過程を踏まえた正しい解釈です。したがって、日本で同性婚制度をもうけたとしても、憲法24条1項に違反することにはなりません。日本国憲法が同性婚制度を禁止するものではないということは、憲法学者、民法学者からも有力に唱えられているところです」とする意見書を公表した。
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