史学の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/07 07:08 UTC 版)
「リチャード・ホフスタッター」の記事における「史学の特徴」の解説
ホフスタッターの方法は、アメリカ歴史学における与論解釈(Consensus-approach)の最初の例として紹介されることがある。対照としてわかりやすいのは、当時アメリカの進歩的で急進的な歴史解釈として定着しつつあった、政治現象を経済的利害によって動機づけるやり方である。チャールズ・ビアードの『合衆国憲法の経済学的解釈(An Economic Interpretation of the Constitution of the United States, 1913)』に代表されるような、マルクスの唯物史観からドイツ哲学の背景を抜き去った単純な歴史理解にホフスタッターは反対していた。たとえば彼は南北戦争の原因として、産業基盤の相違よりは奴隷解放論者たちの宗教観を強調し、さらに北西部に「黒人恐怖」が行き渡っていたという逆説的な状況も忘れずに書く。ホフスタッターは、一人の人間に矛盾した動機が共存するように、民主主義の伝統をもつアメリカ史を動かしたといえる「与論」は対立する諸動機によって形成されたと考えた。しかし多数派の「与論」からは斥けられた主張は、忘れ去られるのでなければ「与論」に反逆して、マッカーシズムのような暴力・言論弾圧のような病理として現れる。後年のホフスタッターは与論史学(Consensus-History)の限界を感じ、アメリカ史を新しい方法で見直そうとしていたと考えられる。その一部が1970年の論文「American Violence」や未完のアメリカ史において発表された。 研究テーマは限定され散漫であり、壮大で一貫した展望をもたないホフスタッターの最大の貢献は、「アメリカ史の複雑さを再発見したこと」である。彼は古文書・古典ではなく、当時一般の読書界に流通した出版物を扱い、歴史上の行為者へ感情移入しようとする。その長所や魅力は伝記の分野で発揮された。現代アメリカに対する分析は、政治家のみならず知識人・右翼の心理にまでおよび、今でも重要性を失わない。
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