史学上の価値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 10:05 UTC 版)
一定の学者は常に同書の価値を部分的に擁護しようとした。例えば近年までデュッセルドルフ大学の古代史教授を務めていたアンソニー・リチャード・バーリーは「セプティミウス・セウェルス伝」までの部分はマリウス・マクシムスの著書(それはスエトニウスの『ローマ皇帝伝』の続編として書かれたという)の散逸された記述に基いているとして、信頼するに値すると主張した。ペンギン・ブックス社から出版した英語版で『ローマ皇帝群像』の前半部分に、後半部分は原本に無いネルウァとトラヤヌスの伝記を加えて『Lives of the Later Caesars』というタイトルで別に出版した。 あまりに古典的な擁護論に回帰したアンソニー・バーリーの学術的態度は、ロナルド・セイムにより徹底的な批判を受けた。セイムはそもそも「ヒストリア・アウグスタ」の擁護論者が掲げるマクシムスが信用に値しない歴史家なのであり、彼のあらゆる著作が史実の歪曲による産物であると指摘する。マクリヌス帝の項における無責任な評伝や、また「ヒストリア・アウグスタ」で唯一評価できるルキウス・ウェルスの項目に一切マクシムスからの引用が無かった事を例に挙げて、彼は同書の信憑性に何も寄与していないと批判した。 膨大な議論はもはや「ヒストリア・アウグスタ」が史料として一切の価値を持たないとする結論を導き、特に253年から284年の間については全面的に棄却されるべきと判断した[要出典] 。それでも断片的に適切な出典が用いられている部分もあり、史料として用いる傾向も残っている。
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