受動免疫療法
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1950年に、ピッツバーグ大学のウィリアム・ハモン(英語版)は、ポリオの生存者の血液からポリオウイルスに対する抗体を含む血清を単離した。この血清はポリオの拡散を防ぎ、ポリオ患者の重症度を低下させるものとハモンは考えていた。1951年9月から1952年7月の間に、5万5000人近くの小児が抗ポリオ血清の臨床試験に参加した。試験の結果は有望であり、血清は麻痺性ポリオの発症を約80%防ぐ効果があり、厳密に制御された環境では保護効果は5週間継続することが示された。また、血清はポリオを発症した患者の重症度を低下させることも示された。 しかし、ポリオの予防と治療のための抗体血清の大規模な使用に関しては、血清によってもたらされる免疫が長続きしないこと、抗体による保護効果が不完全であること、流行が発生するたびに再注射が必要であること、投与に最適な時期が不明であることといった多数の欠点があった。抗体血清は広く投与されたが、血清の調製は高価で時間のかかる過程であったため、医学界の焦点はすぐにポリオワクチンの開発へと移った。
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受動免疫療法
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モノクローナル抗体の投与は、一種の受動免疫療法である。モノクローナル抗体は補体依存性細胞傷害(英語版)(CDC)と抗体依存性細胞傷害(ADCC)によって腫瘍細胞の破壊を促進する。CDCにおいては、モノクローナル抗体は特定の抗原に結合して補体系の活性化を引き起こし、腫瘍細胞に孔の形成を引き起こす。ADCCにおいては、モノクローナル抗体のFabドメインが主要抗原に結合し、Fcドメインがエフェクター細胞(食細胞とNK細胞)に存在するFc受容体に結合することで、エフェクター細胞と標的細胞の間にブリッジを形成する。これによってエフェクター細胞の活性化が誘導され、好中球やマクロファージによる腫瘍細胞に対する食作用が引き起こされる。さらに、NK細胞は細胞傷害性分子を放出し、腫瘍細胞を溶解する。 DN30は抗METモノクローナル抗体で、METの細胞外部分を認識する。DN30はMETの細胞外ドメインのシェディングと細胞内ドメインの切断を誘導し、細胞内ドメインはプロテアソームによって分解される。その結果、細胞の内側ではMETは不活性化され、外側ではシェディングされたMETの細胞外ドメインがデコイとして他のMET受容体の活性化を妨げる。DN30は腫瘍の成長を阻害し転移を防ぐことが動物モデルで示されている。 OA-5D5はone-armed antibodyと呼ばれる一本腕の抗MET抗体であり、同所移植された膵臓腫瘍と膠芽腫において腫瘍成長を阻害すること、腫瘍異種移植モデルで生存率を改善することが示されている。OA-5D5は大腸菌Escherichia coliで組換えタンパク質として生産され、マウスの重鎖と軽鎖の可変領域とヒトのIgG1の定常領域から構成される。抗体はHGFのMETへの結合を競合的に阻害する。
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