原始から古代まで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 21:16 UTC 版)
冒頭でも述べたとおり、ばねは弾性を利用する機械要素や部品の総称である。人類が使う道具には「弾性を利用してばねとして利用する道具」と「弾性を利用せず剛体として利用する道具」という大まかな2種類の道具が考えられるが、18世紀の産業革命まで、これら2種類の道具によってのみで人類の歴史が積み重ねられてきたとも評される。人類によるばねの利用の歴史は太古に遡る。 まず、人類が弾性を利用した最初期の道具として挙げられるのは、原始的な罠である。約10万年前から約5万年前にかけて、しならせた木の枝を利用した動物捕獲のための罠が使われ始めたといわれる。さらに、弓もまた人類が弾性を利用して自己以外のエネルギーを利用した最初期の道具の一つとして挙げられる。弾力のある木の枝に弦を張った弓が発明され、弓矢が狩猟に用いられたと考えられている。弓の使用の始まりがいつどこなのかは判明していないが、旧石器時代後期のソリュートレ文化で石鏃が存在していた。弓矢が広く普及したのは中石器時代以降と考えられており、世界各地に残る岩壁画(英語版)からも、弓矢の使用の跡が確認できる。最古のもので紀元前約1万年の岩壁画が残ると推定されているタッシリ・ナジェールには、弓を持つ人たちを描いた岩壁画が残されている。弓矢はやがて戦争の武器としても使われるようになり、簡単な構造であった弓以上にばねの張力を利用する、より強力な兵器へと発展していった。 紀元前4世紀頃、古代中国では機械式弓の弩が出現した。古代ギリシャでも、発射物として矢も石も含めた広い意味でのカタパルト兵器が弓から発展していった。アレクサンドリアのヘロンが、弩と同じような機械式弓のガストラフェテスの構造について説明を書き残している。ヘロンの説明によると、弓の材料は「角と木の一種」が用いられていた。弓型ではなく、ねじりばねを利用した形式の射撃装置も、紀元前4世紀頃の古代ギリシャで考案されていた。このねじりばねは糸状の材料をより合わせて束ねたもので、これにレバーを差し込み、ねじることで復元力が発揮される機構であった。ねじりばねのための糸状の材料には、動物の腱や人間の髪の毛が利用された。 古代ギリシャで考案されたカタパルト機構にはねじりばね以外を利用する種類もあり、クテシビオスは青銅製の板ばねを利用するカタパルトを考案した。このクテシビオスの板ばねは、最古の板ばねともいわれる。さらにビザンチウムのフィロンが、クテシビオスのカタパルト機構の説明を書き残している。このフィロンによるカタパルトの説明中で、弾性を利用することを意識した一つの独立した部品としての「ばね」という概念は初めて語られたと考えられている。またさらにフィロンは、剣を曲げて試験するときは瞬時に元の形に戻る点に注意するよう呼び掛ける記述も残しており、金属が持つ弾性の重要性について明確に言及した最古の記録を残している。
※この「原始から古代まで」の解説は、「ばね」の解説の一部です。
「原始から古代まで」を含む「ばね」の記事については、「ばね」の概要を参照ください。
- 原始から古代までのページへのリンク