危機の定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 05:38 UTC 版)
危機とは、a) 家族、経済、社会等複雑なシステムにおいて、b) 機能が低下し、c) 即時的な決断が必要とされるが、d) 機能低下の原因が判っていない状態と定義される。以上 a) から d) を以下に詳述する。 a) 複雑なシステムで発生する – 単純なシステムでは危機にはならない。例えば、道徳的価値や経済的、政治的な危機はあり得るが、自動車危機というのはあり得ない。 b) 機能の低下 - システムの機能は低下するものの停止するわけではなく、機能し続けてはいる。 c) 即時的な決断が必要 - システムのさらなる崩壊を食い止めるための決断を急ぐ必要がある。 d) 原因が判らない - 原因が多数あるか未知であるため、状況を好転させるために合理的な、既知の情報に基づいた決断を下すことができない。 危機を定義付ける特徴はいくつかある。シーガー、セルナウ、およびアルマーの説によると、危機は4つの特徴を持った、「組織の高優先度の目標に対して、高レベルの不確定要素および脅威(もしくは脅威と感じられるもの)を生み出す、特定の、想定外の、そして非日常の出来事もしくはその連続」であるとされている。従って、危機を定義付ける最初の3つの特徴としては、ある出来事が、 想定外である。 不確定要素を生み出す。 重要な目標に対して脅威となると見られる。 ということになる。 これに対し、ベネットは「危機とは、古いシステムがもはや維持し得なくなったところでの移行の過程である。」と反論している。従って、危機を定義付ける4つ目の要素は、変化の必要性ということになる。変化が必要でない場合は、その出来事は失敗と呼んだほうがより正確である。 その性質上予知することのできない、火山の噴火や津波等の自然災害を除けば、人間が直面する危機の多くは人間によって造り出されるものである。それ故、危機の特徴の1つである「想定外であること」の根源は、危機的状況の凶兆に気づくことのできなかった人間に帰せられる。人間が危機的状況の凶兆を危機に陥る前に気づけなくしている要因のいくつかは、人間の感情に対して救いや保護をもたらす、拒否等の心理的な反応にある。 危機の凶兆に気づけない別の理由としては、人間は誤った理由によって何かをしていると信じ込むという「ひっかけ」に遭いやすくなるということが挙げられる。換言すれば、人間は正当な理由で誤ったことをしてしまうということである。例えば、人間は気候に実影響を与えない経済活動に携わることで、気候変動の脅威を解決していると信じてしまうこともあり得る。ミトロフおよびシルバーズは、こうした類の過誤に対する2つの理由を仮定し、タイプ3(不注意)およびタイプ4(故意)に分類している。 行動の結果に対する注意の欠如が、結果として危機を引き起こすこともある。この観点から人間は、難局の真の原因を理解しないとやがては下降線をたどり続けかねないということを学ぶこともある。 しかし一方で、危機とは「転機」と言う解釈も存在する。山本(2000) キャプラン,G(1960-1968)は、その過程の介入の試みに拠っては、結果的に良い結果をもたらすか、逆の結果をもたらすか達成には相違が生じるとしている。
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