十分な葉酸存在下でのMUT及びMTR欠損疾患
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 13:37 UTC 版)
「シアノコバラミン」の記事における「十分な葉酸存在下でのMUT及びMTR欠損疾患」の解説
十分な葉酸が存在している場合には、ヒトにおいてビタミンB12依存酵素であるMUT関連反応は神経系に最も特徴的な副次影響を示す。これは、葉酸の再生産に関連したメチル基転移型のMTR反応が、葉酸が十分存在している場合にはその欠乏の影響が明らかでなくなるためである。 1990年代後半から多くの国々で強化小麦粉として葉酸が添加され始めてから葉酸欠乏症は稀となった。同時に貧血と赤血球のサイズに関連したDNA合成感受性試験が小規模の医学試験所でも日常的に行われているため、ビタミンB12欠乏症に影響を受けるMTRはDNA合成障害による貧血のような古典的症状のように明らかでなく、血中や尿中のホモシステイン濃度の上昇のようにあまり明らかでない症状で判別されることになる。この症状は、動脈と(脳卒中や心臓発作に影響する)凝固系へ長期間にわたりダメージを与えるが、この影響はアテローム性動脈硬化症や老化と関連したその他の要因と分離するのが難しい。 ビタミンB12欠乏症の結果によるミエリンの損傷は、適切な量の葉酸やメチオニンの存在があっても、より特徴的で明確なビタミン欠乏の問題となる。これは、メチルマロニルCoAからスクシニルCoAへ代謝されるに際して絶対必要なMUTと関連した反応により最も直接的に結び付いている。この2番目の反応の障害はメチルマロン酸の濃度の上昇をもたらし、ミエリンの不安定さをもたらす。過剰なメチルマロン酸は、通常の脂肪酸合成に障害をもたらし、通常のマロン酸よりもより通常の脂肪酸合成に悪影響を与えている。異常な脂肪酸がミエリンに影響を与えているのなら、結果としてミエリンは脆くなり、ミエリンの崩壊が発生する。しかしながら正確なメカニズムは解明されていない。結果として亜急性の中枢神経と脊髄の複合した崩壊が引き起こされる。たとえ葉酸が十分に存在して貧血が発生していなくとも、原因が何であれ、ビタミンB12欠乏症はニューロパチーを引き起こす。 ビタミンB12依存のMTR反応は、間接的なメカニズムではあるが神経に障害を与える影響を起こす。ミエリン鞘のリン脂質のメチル化に必要なS-アデノシルメチオニンを合成するには(もしビタミンB12によりホモシステインから再生産されない場合には、葉酸のように食事中から摂取しなければならないように)適切なメチオニンが必要である。S-アデノシルメチオニンの合成はビタミンB12に依存しないが、ビタミンB12は基質の原料となる必須アミノ酸のメチオニンの再利用を手助けしている。加えて、S-アデノシルメチオニンは神経伝達物質、カテコールアミンの合成や脳内の代謝に関わっている。これらの神経伝達物質は、気分を保つために重要で、ビタミンB12欠乏症が抑うつとなぜ関連しているかを説明しうるものである。葉酸を大量に摂取しない限り、ミエリン鞘のリン脂質のメチル化は、MTRの再利用に関係して適切な量の葉酸に依存するかもしれない。
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