医師の道徳
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/01 20:43 UTC 版)
「古代ギリシア医学 (ガレノス以前)」の記事における「医師の道徳」の解説
「ヒポクラテスの誓い」も参照 古代ギリシア人の間では、その最も古い記事であるホメロスの詩にも、勇敢、知恵、忍耐など道徳と称することのできるものが見える。しかしホメロスの社会では、なお神話的、宗教的要素が濃厚に存在しており神の意志が強く支配している。ギリシア人が意識的に人間自身による行動の規範を考えたのは、デモクリトス(前450年頃)の頃である。すでに詩人哲学者クセノファネス (前六世紀)が擬人的なオリュンポスの神の信仰を諷刺したことは有名であるが、デモクリトスは無神論的見解を表明するとともに、倫理学的な思想を持った断片を幾つか残している。例えばM.ヴント『ギリシア倫理学史』上巻、210ページでは、デモクリトスの思想について、「この最初の本当の倫理学」と呼ばれている。他方、前五世紀には悲劇作家たちによる運命との闘争が、アテナイの民主主義社会建設を背景に展開されている。倫理観乃至は道徳思想の発生については詳しく述べないが、医術の発展との関連のなかで念頭に置かなければならないのは、経験科学としての医術の確立が迷信的要素を排除し、運命観の排除にも貢献があったはずだという一事である。『ヒポクラテス集典』には科学的な内容のものの他に、道徳的乃至は倫理的内容のものが重い地位を占めているのも、このことの表れであろう。ただし『集典』のなかには、道徳観樹立の始まりを思想をあらわすものは見当たらない。我々の所有するものは、主として前四世紀頃の倫理思想を医師の道徳に反映させたものである。すなわち、このアリストテレス以後のギリシア哲学の中心問題は自然学から人間の行為の学を引出す方向から、人間の行為から自然学を引出す方向へ移ったのであったが、その代表ともいうべきストア派とエピクロス主義両学派の倫理思想が『ヒポクラテス集典』にも反映しているようである。『ヒポクラテス集典』の中、「医師の心得」、「礼儀」、「誓い」、「掟」、および「医師論」の第一節がこの種に属する。
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