制度の支配力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 14:33 UTC 版)
日本の教育機関の中には、1条校と呼ばれる学校制度に従ったものとそれ以外の物がある。特に全日制の初等教育機関および前期中等教育機関のほとんどは、1条校である小学校・中学校であり、その他の選択肢がほぼない状況である。学習塾などの1条校を補う教育施設も多く存在するが、授業時間や設備などの点において1条校と比較すると大きく差をつけられている。しかし1条校の場合、強固な年齢主義や学習指導要領の物足りなさがあったりするなど必ずしも児童生徒に最適な教育を行なっているとも言いがたい。そのため、学習塾などの民間の事業者がそれを補っている。学校法人または準学校法人が設置する1条校・専修学校・各種学校であれば条件付で私学助成金を受け取れるなど経営的なメリットが大きいが、私学助成金を受け取る法人は所轄庁の権限下に置かれる(私立学校振興助成法私立学校振興助成法 第10条・第16条)。ただし上記の点は朝鮮学校などの外国人向けの学校には制約が多く、また外国人学校(日本に居住する外国人をもっぱら対象とする教育施設)は、1条校・専修学校ではないものの一般の小学校・中学校と同じような規模や施設、授業内容を揃えていることもある。 また日本の学校制度は法令・例規などの成文法によって明確に規定されている部分と、慣習によって続けられている部分が存在する。外見からはそれが成文法上において根拠があるものなのか、慣習によるものなのかは判別しづらい。例えば高等学校に14歳で入学できないことなどは法的根拠があるが、20歳の人が中学校に入学を頼んでも断られる場合が多いのは学校の設置者(公立学校の場合は教育委員会)の判断によるものである。このように、学校制度を語るときには成文法のほかにも実態がどうなっているのかを含めて考えなければ議論が成り立たない場合がある。これは成文法による最低限の制度と、裁量による運用の両方を用いることで、状況変化に対応しやすいというメリットもあることから、必ずしも問題があるわけではない。しかし、裁量が大きすぎるとそれによって教育の場を奪われる例も起こり得る。成文法上は、30歳の中学校の生徒も何らおかしいところはないが、公立学校であっても入学・継続在学を拒否する例があり、また高等学校などの校則に運転免許の取得を禁止するという規定があったりするのも、成文法上起こり得ることを十分に考慮されないまま定められた裁量の結果である。 「学校制度」という言葉を用いるとき、それが成文法のみを指しているのかそれとも現場の裁量も含むのかは、定義が定まっていない。商取引における商慣行の存在と同じように、学校においては法令・例規に定められておらず、また学則・校則等にも定められていないような慣習法が存在しこれらを含めて制度と呼称するかでその指すものは大きく変わってくる。このため、「学校が悪い」「制度が悪い」という議論に対しては必ずしも法律を変えなくても現場の意識改革で解決するケースがあることを認識する必要がある。以下に、裁量と成文法の例をあげる。なお、学則・校則等や教育委員会の告示・通達等(高校の募集要項など)は成文法と裁量の中間に位置する。
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