制作とその背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 15:02 UTC 版)
宇多田にとって音楽作りとは「自分一人で、安全だと感じなければそれに没頭することができない」ような「聖域」であり、そのために長年あまりコラボレーションをしてこなかった。「その空間を共有し、心を開くのは難しいこと」だったという。2010年以降の活動休止、16年の復帰を経た前2作(『Fantôme』『初恋』)は、生楽器を多用するという意味で宇多田にとって実験的なアルバムだった。「他の人たちを信頼し、自分のコントロールが及ばないところで何かを実現させる」「デモを作って指示を出すことはできるが、それ以外では彼らを信頼して、何が起こるかを見守るしかない」といった経験は自信をつけるのに良い方法だったといい、何事につけても少し成長できた気がしたと宇多田は話している。それらを踏まえて本作では、2004年にUtada名義で発表された『Exodus』を思い返し、エレクトリックなサウンドに回帰することになった。 そしてそのために技術的な面で外部の力を借りたいということで、本作ではこれまでにも度々双方の作品に関わってきた小袋成彬のほか、A・G・クック(A.G. Cook)、フローティング・ポインツ(Floating Points)らが共同プロデューサーとして参加している。また本作の収録曲でもっとも古い「Face My Fears」は、スクリレックス(Skrillex)とプー・ベア(英語版)(Poo Bear)との共作となっている。同曲や「誰にも言わない」などを除いた本作収録のほとんどの曲はパンデミック後に書かれた。宇多田がクックとタッグを組んだ最初の曲である「One Last Kiss」は、丁度ロンドンがロックダウン真っ最中だったことにより、完全リモート体制で制作が進められた。一方で「君に夢中」は、2021年の夏に宇多田が久しぶりにニューヨークに帰った際にそこでクックと初めて対面し数日間かけて制作されたものとなっている。サム(フローティング・ポインツ)とは最初、友達を通して知り合ったといい、互いに音楽をやっていることも了解していて、そこで宇多田が共作の話を持ち掛けたところ快諾してくれたという。サムは、それまで誰かと一緒にトラックメイキングの共作をするという経験がなかったこともあって、タイトル曲「BADモード」では宇多田側がリードする形で、各パートの音色の差し替えなどの希望を出していくことで制作が進行していった。レコーディングの日には一緒に来ていた宇多田の長男が、習い始めたヴァイオリンを弾くことになった。「Somewhere Near Marseilles -マルセイユ辺り-」については、もともと宇多田が作ってあったデモは4分に満たない長さのものだったが、サムと制作を進めるうちに段々と長くなっていった。なお同曲の歌詞はパリに住む友人とのチャットからインスピレーションを得ている。同じくサムとの共作の「気分じゃないの (Not In The Mood)」では、締め切り当日の朝になってもなかなか歌詞が書けずにいたなかで、街を歩き目にしたものをそのまま綴っていくという宇多田にとって初の試みがなされた。また本楽曲でも宇多田の長男がボーカルで参加している。 宇多田が本作の制作期間に聴いていた音楽は「クラブ、ダンス的なもの」が多かったといい、特に「Find Love」を作ってる時期はMoodymannやGlenn Undergroundなどのハウス・ミュージックをよく聴いていたという。
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