初鹿野裕樹
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/26 20:16 UTC 版)
初鹿野裕樹
はじかの ひろき
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生年月日 | 1977年7月6日(48歳) |
出生地 | ![]() ![]() |
出身校 | 東海大学体育学部卒業 |
前職 | 警備会社顧問 警察官 |
所属政党 | (無所属→) 参政党 |
選挙区 | 神奈川県選挙区 |
当選回数 | 1回 |
在任期間 | 2025年7月29日 - 予定 |
初鹿野 裕樹(はじかの ひろき、1977年〈昭和52年〉7月6日 - [1])は、日本の政治家。参政党所属の参議院議員(1期)。元警視庁警察官(最終階級:警部補[2])。
経歴
1977年、神奈川県横須賀市に生まれる。小学2年生から柔道を始め、高校で全国大会に出場し、東海大学体育学部に柔道推薦で進学[3]。大学では全国大会(団体)で優勝した[3]。2000年から2020年まで警視庁に勤務し、警視庁柔道部に所属。選手としての活動を終えた後は、柔道、逮捕術、拳銃の指導にあたった[4][5]。
2023年、葉山町議会議員選に無所属で立候補し、落選した[6][3]。
参政党時代
2024年、第50回衆議院議員総選挙に神奈川11区から参政党公認で立候補したが、落選した[7]。参政党を選んだ理由については、少年時代から日本の歴史に強い関心があり、同党の伝統文化を重視する理念に共感したためだとしている[4]。
2025年、第27回参議院議員通常選挙に神奈川県選挙区から参政党公認で立候補し、党の急速な支持拡大を背景に初当選した[8]。4議席目をめぐり公明党現職の佐々木さやかと激しく競り合い、21日午前4時過ぎに当選確実と報じられた[9][3]。最終的な票差は約5千票だった[10]。選挙戦では、外国人の受け入れ厳格化を主張し、生活保護や奨学金に関する根拠に乏しい発言を繰り返したり、賛同しないものに対し「非国民」と発言したりし物議を醸した(#論争)[9]。
人物
論争
2025年7月、第27回参議院議員通常選挙の選挙期間中、Xで「たくさんの仲間が共産党員により殺害され、殺害方法も残虐であり、いまだに恐怖心が拭えません」と投稿した。この発言に対し、日本共産党は謝罪と撤回を求める抗議文を送付したが、回答がなかったため、名誉毀損および公職選挙法違反(虚偽事項公表)で刑事告訴した[12][13]。初鹿野は、白鳥事件などを例に挙げ、「歴史の事実に基づいている。別に何ら臆することはない。(謝罪や撤回は)必要ない」と述べている[14][15]。
同選挙期間中、「日本人ファースト」をキャッチコピーに掲げ、街頭演説で「外国人は優遇されている」「生活保護は受給権がない外国人ばかり」など、事実に基づかない発言を繰り返したと報じられた[16][17][18]。こうした発言については複数の報道機関がファクトチェックを行い、厚生労働省の公式データと異なり根拠が不明であると判定された[19][20][21]。また、「中国人留学生に返済義務なしで1,000万円の奨学金が支給され、日本人は借金漬け」とする主張についても[22]、文部科学省は外国人優遇の実態はないと否定。発言はミスリードと判定された[23][24][25]。こうした発言に対し、街頭演説では「人間にファーストもセカンドもない」と抗議する市民の声が上がり[20][26]、当落線上で競る他候補に戦略的投票を行う動きも見られた[27][28]。
神奈川新聞は、初鹿野の発言について、デマであり、判例や統計に照らして「ヘイトスピーチ」に該当するとする記事を掲載した[29][30]。これに対し初鹿野は、SNSなどで「偏向報道」と反論し[30]、自身の発言は客観的事実に基づく政治的主張であるとして抗議文をブログに掲載した[31]。自由法曹団神奈川支部は、初鹿野の演説および抗議ブログ中の生活保護優遇などの主張について、根拠のない誤りでありヘイトスピーチに該当するとして抗議声明を発表[32][33]。発言の撤回と在留外国人への謝罪を求めたが、初鹿野側からの回答はなかった[34]。表現の自由や公職選挙法に詳しい杉山大介弁護士は、初鹿野の発言は人種差別撤廃条約が定める「国籍や人種などを理由に、差別的な区別・排除・制限・優先を行うこと」に該当し、属性を理由にしたデマによる攻撃は正当化できず、明確なヘイトスピーチにあたると指摘している[35]。
7月16日、日刊ゲンダイが警視庁時代の横領疑惑と退職理由の真偽に関する報道を行った[30][36]。これに対し参政党は同日、記事の削除と謝罪記事の掲載を求めた[37]。同月20日、初鹿野は自身のXに「やはり日刊現代は廃刊しかないようだ」と投稿した[38]。
7月18日、川崎駅前での街頭演説において、反差別を訴えて集まった市民に対し「ああいうのは非国民ですから」と非難した[39]。この発言について、21日の神奈川新聞の取材に「殉職者をばかと言う人は非国民じゃないですか」と答えたが、「殉職者」が何を指すのかは明らかにしなかった[40]。16日には、抗議活動を行う市民に対して「犯罪」であると述べ、支援者に110番通報を呼びかけていた[40][41]。また、7月3日の公示第一声では「左翼思想は日本から出ていけばいい」と発言したことも報じられている[24]。
7月22日、参政党は国会内で記者会見を開いたが、初鹿野をめぐる報道を続けていた神奈川新聞の記者の出席を認めず、退出を求めた[42][43]。同日、神奈川新聞は「知る権利をないがしろにする行為で、容認できない」として党へ抗議文を提出した[44][45]。ジャーナリストの江川紹子は、国政政党が都合の悪い記者を排除する行為は民主主義に反し、報道機関が萎縮すればジャーナリズム全体に悪影響を及ぼすため、メディア全体で抗議すべきだと指摘した[46]。立教大学の砂川浩慶教授は、参政党がPRと報道を混同し、批判を排して説明責任を果たさない姿勢は民主主義に反すると指摘。記者の排除は有権者の排除に等しく、メディアも当事者として誤りを正さなければ、SNS上のPRが世論を支配すると警鐘を鳴らした[47]。
選挙歴
当落 | 選挙 | 執行日 | 年齢 | 選挙区 | 政党 | 得票数 | 得票率 | 定数 | 得票順位 /候補者数 |
政党内比例順位 /政党当選者数 |
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落 | 2023年葉山町議会議員選挙 | 2023年4月23日 | 45 | ーー | 無所属 | 275票 | 2.22% | 14 | 18/20 | / |
落 | 第50回衆議院議員総選挙 | 2024年10月27日 | 47 | 神奈川11区 | 参政党 | 2万4718票 | 13.78% | 1 | 3/3 | / |
当 | 第27回参議院議員通常選挙 | 2025年 7月20日 | 48 | 神奈川県選挙区 | 参政党 | 57万7085票 | 12.70% | 4 | 4/16 | / |
脚注
- ^ “立候補者情報”. 時事通信社. 2025年7月21日閲覧。
- ^ “衆議院 立候補者詳細”. static.chunichi.co.jp. 2025年7月21日閲覧。
- ^ a b c d e “初当選の参政・初鹿野裕樹氏ってどんな人? 特技は柔道、「理不尽な扱いでも動じない根性」が強み”. 東京新聞 (2025年7月21日). 2025年7月23日閲覧。
- ^ a b “参政党・新人、初鹿野裕樹氏はどんな人? 神奈川選挙区の候補者紹介 参議院選挙2025”. カナロコ by 神奈川新聞. 2025年7月21日閲覧。
- ^ a b “参院選向けはじかの政治活動チラシ第1弾”. 選挙ドットコム. 2025年7月21日閲覧。
- ^ “【都県別トップ】統一地方選2023 首都圏:東京新聞デジタル”. 東京新聞デジタル. 2025年7月21日閲覧。
- ^ “神奈川11区 第50回衆議院議員総選挙”. 選挙ドットコム. 2025年7月21日閲覧。
- ^ “参政党・初鹿野裕樹氏、初当選が確実に 躍進止まらず、参院選神奈川選挙区”. 神奈川新聞. (2025年7月21日) 2025年7月21日閲覧。
- ^ a b “神奈川選挙区、明け方の逆転劇 参政新人が公明現職に競り勝つ”. 毎日新聞 (2025年7月21日). 2025年7月23日閲覧。
- ^ “【スクープ撮】参政党ナンバー2 鈴木敦衆院議員の“期日前不倫”《妻の里帰り出産中に愛人と浴衣で…》”. 週刊文春 電子版 (2025年7月23日). 2025年7月24日閲覧。
- ^ “浦賀奉行だったご先祖さまの縁 - はじかのひろき(ハジカノヒロキ) | 選挙ドットコム”. 選挙ドットコム. 2025年7月21日閲覧。
- ^ “参政党候補を共産党神奈川県委員会が刑事告訴 「SNSで党を中傷」”. 朝日新聞. (2025年7月16日) 2025年7月21日閲覧。
- ^ “共産、参政の新人候補を刑事告訴 「Xに虚偽投稿」神奈川”. 東京新聞 (2025年7月16日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ “「参政党候補が虚偽投稿」 共産党が抗議、神奈川県警に被害相談”. 毎日新聞. (2025年7月16日) 2025年7月21日閲覧。
- ^ “「SNSで党を中傷」参政・初鹿野氏を共産党神奈川県委員会が刑事告訴”. 神奈川新聞 (2025年7月17日). 2025年7月23日閲覧。
- ^ “反差別の声「なおさら大きく」「地道に」 参院選で参政党台頭、市民ら抗う”. 神奈川新聞 (2025年7月21日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ “【参政党】「韓国はそういう国」「共産党に仲間を殺害された」発言が物議…識者と振り返る「あなたの町の候補者」のトンデモ発言”. SmartFLASH (2025年7月14日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ “生活保護利用者怒り 「最高裁判決と原告愚弄するな」”. しんぶん赤旗 (2025年7月17日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ “ファクトチェック 生活保護は「受給権がない外国人ばかり」 参政党候補の発言は不正確”. 毎日新聞 (2025年7月13日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ a b “神奈川選挙区の参政党候補またデマ 「外国人優遇」主張、高まる市民の批判”. 神奈川新聞 (2025年7月12日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ “(ファクトチェック)外国人への生活保護、日本人より優遇されている?”. 朝日新聞 (2025年7月17日). 2025年7月23日閲覧。
- ^ “「選挙運動の名のもとに露骨なヘイトスピーチが」参議院選挙 急浮上の争点“外国人政策”に高まる不安の声【報道特集】”. TBSテレビ (2025年7月12日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ “ファクトチェック 「中国人留学生に1000万円」はミスリード 参院選で同調候補も”. 毎日新聞 (2025年7月16日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ a b “「日本人差別の事実ない」文科省が否定 参政党候補の外国人優遇主張に”. 神奈川新聞 (2025年7月9日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ “「外国人問題」いつのまにか選挙の争点に デマ拡散、何が起きたのか”. 朝日新聞 (2025年7月23日). 2025年7月24日閲覧。
- ^ “「私は差別に投票しない」虚言飛び交う選挙ヘイト、際立つ川崎市条例の重み”. 神奈川新聞 (2025年7月20日). 2025年7月23日閲覧。
- ^ “【参院選・激戦区ルポ】参政党と公明党が“最後の枠”をめぐりデッドヒート 「参政を通さないために今回だけは公明に入れる」というリベラル層も”. AERA (2025年7月14日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ “ライバル陣営に「勝ってほしい」…伝統的政党の支持者から聞こえてくるジレンマ 警戒する「新勢力の台頭」”. 東京新聞 (2025年7月19日). 2025年7月24日閲覧。
- ^ “「生活保護は外国人優遇」事実ねじ曲げ差別扇動 参政党から出馬の初鹿野氏”. 神奈川新聞. (2025年7月3日) 2025年7月21日閲覧。
- ^ a b c “参院選神奈川で猛攻の参政党候補に疑惑を直撃! 警視庁時代に「横領発覚→依願退職→退職金で弁済」か”. 日刊ゲンダイ. (2025年7月16日) 2025年7月21日閲覧。
- ^ はじかのひろき (2025年7月6日). “神奈川新聞社に抗議いたします”. 2025年7月21日閲覧。
- ^ “参政党・初鹿野氏の演説は「ヘイトスピーチ」 自由法曹団神奈川支部が抗議”. 神奈川新聞. (2025年7月10日) 2025年7月21日閲覧。
- ^ “参院選神奈川選挙区立候補・参政党・初鹿野裕樹氏への謝罪、並びに発言の撤回を求める声明”. 神奈川県労働組合総連合(神奈川労連) (2025年7月10日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ “参政党・初鹿野氏の演説や投稿は「根拠なく誤り」 自由法曹団支部が警笛”. 神奈川新聞 (2025年7月18日). 2025年7月23日閲覧。
- ^ “「選挙運動に乗じたヘイトスピーチ」が横行する参院選… 規制が必要なのは“ヘイト”ではなく「デマ」だと弁護士が語るワケ”. 弁護士JP (2025年7月18日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ “【参院選】選挙区最後の当確!〝横領〟報道の参政党・初鹿野裕樹氏が公明党候補に辛勝”. 東京スポーツ (2025年7月21日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ 参政党 (2025年7月16日). “株式会社日刊現代に対する記事削除等請求のお知らせ”. 2025年7月21日閲覧。
- ^ はじかのひろき🇯🇵参政党・神奈川県国政改革委員の2025年7月20日午前8:59のポスト、2025年7月21日閲覧。
- ^ 「反差別の市民は「非国民」 参政党・初鹿野裕樹氏、川崎駅前の街頭演説で 参議院選挙2025」『カナロコ by 神奈川新聞』2025年7月18日。2025年7月21日閲覧。
- ^ a b “「非国民」発言、撤回せず 参院選で初当選の参政党・初鹿野裕樹氏”. 神奈川新聞 (2025年7月21日). 2025年7月22日閲覧。
- ^ “参政党・初鹿野氏が差別反対の市民を敵視 専門家「政治家の資質が欠落」”. 神奈川新聞 (2025年7月18日). 2025年7月23日閲覧。
- ^ “参政党、国会内での定例会見で神奈川新聞社記者を排除”. 神奈川新聞 (2025年7月22日). 2025年7月23日閲覧。
- ^ “参政党、会見場から神奈川新聞記者を排除 他の記者は登録なしで参加も ”. 琉球新報 (2025年7月23日). 2025年7月23日閲覧。
- ^ “参政、神奈川新聞記者を「排除」 22日の神谷代表会見”. 共同通信 (2025年7月23日). 2025年7月24日閲覧。
- ^ “参政党側の説明はうそ、神奈川新聞記者が反論 参政党が会見から排除”. 神奈川新聞 (2025年7月24日). 2025年7月24日閲覧。
- ^ “参政党、神奈川新聞記者の会見取材を拒否 「お断りしたのは事実」”. 朝日新聞 (2025年7月23日). 2025年7月24日閲覧。
- ^ “参政党、会見から神奈川新聞の記者を排除 報道で排外主義を批判 党スタッフ「取材するもしないも我々の権限で決める」”. 沖縄タイムス (2025年7月24日). 2025年7月24日閲覧。
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