初期生成音韻論における研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/03 09:30 UTC 版)
「黒田成幸」の記事における「初期生成音韻論における研究」の解説
ヤウェルマーニ音韻論アメリカカリフォルニア州のネイティブ・アメリカンの一言語であるヨクーツ語の一方言であるヤウェルマーニに関するStanleyの記述に基づき、生成音韻論による分析を行う。生成音韻論には基本交替形という仮説があるが、これは基底形は交替形のうちの一つとして必ず現れる、というものである。しかし黒田のヤーウェルマニの母音に関する研究では、音韻規則の一般性とそれらに妥当な順序付けを行い、それによると基底形は交替形として現れない抽象的なものになるということを示した。タームペーパーが元になって出版され、現在でも生成音韻論の重要な研究となっている。 日本語の促音と撥音に関する議論による音素の否定構造主義による分析でそれぞれ/Q/、/N/という音素と仮定されていた促音と撥音について、字音語を除いてこれらが生起する動詞活用とリ延長擬容語(「はきはき」、「しょぼしょぼ」と写像関係にある「はっきり」、「しょんぼり」など)を対象とした生成音韻論的考察により、それらが同時に現れる派生の一段階としての表示が存在しないことを示し、これによって促音と撥音が音素である、という仮定が棄却されることを示す。促音は[+子音性]という素性のみが指定された分節音であり、撥音は[+子音性]の分節音が[+有声]の分節音に先行する位置で[+鼻音性]が素性補充されたものと考えることができる。基底形から音声表示への派生のいかなる段階でも、[+子音性]のみからなる分節音と区別される[+子音性、+鼻音性]のみからなる分節音が同時に存在する表示はない。これによって文法内では促音と撥音という音素を設定する場所はないことを示す。ただし「っ」、「ん」という表記が与えられていることは日本語を母語とするもののなんらかの直観を反映するものとして、それを知覚処理の領域に求めうるということを示唆している。『言語研究』(和文)、博士論文の最後の章(英文)で発表され、促音と撥音に関する重要な研究となっている。
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