刑事政策論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 10:06 UTC 版)
刑事政策における犯罪抑止という観点から社会的な規範意識、また規範意識を醸成するための教育や躾の重要性を唱えている。 少年犯罪に関しては、戦後1990年代にいたるまで深刻化(増加・凶悪化)していると指摘し、厳罰化を主張している。また、2002年までは治安が悪化し、その主要因は少年犯罪と外国人犯罪であったとした。。これらの主張の根拠となるのは戦後日本の犯罪統計を中心とする社会統計の分析である。少年犯罪においては、例えば強盗検挙人員に占める少年の割合の上昇を根拠に強盗事件の増加に少年が大きく関与していると主張していた。また、外国人犯罪については、平成13年の通常第一審裁判所の被告人82万8685人中、9,594人が外国人であり、「一一・六%は外国人被告人なのである(原文ママ)」と指摘し、その影響力の大きさを指摘している。しかし、2002年以降、刑事関係者の努力により、治安状況は回復したとする。。しかし、その手法と解釈については評価が分かれている。特に統計処理について検挙率補正による少年犯罪検挙人員率や推定犯罪率という独自の手法で算出した値を根拠に自説を展開する点については批判が多い。 一部の犯罪学者の間では、治安の悪化は統計のマジックであるとの主張もあるが、前田はこれらについて、強盗を例にとり、「そういう捏造論者の人たちも、強盗がふえているということは否定できないんですね。これはもう厳然たる事実として、平成元年には強盗は千五百件だったんですね。平成十年は七千六百件なんですね。これは大変なふえ方なんですよ。どうやって警察が強盗の事件をでっち上げるのか。検事に全部送らなきゃいけない。裁判所に行くんですよ。ということは、検察と裁判所までぐるになって強盗の数字を書きかえているのか。これはあり得ないことですね。」「そういう言い方をすると、強盗はここ十年で一八%増、これをどう見るかというのは難しい評価だと思いますね。ただ、一八%というのも、二割ふえるというのも重大なことといえば重大なことという評価もあり得る。」と反論している。 刑法学あるいは刑事政策としての前田説において、重要な位置を占めている概念が規範意識である。ただし、前田の主張によると、規範意識の内容は絶対不変のものではなく、時代や社会状況によって変化しうるとされており、その細則は定められていない。それよりも、前田説で重要視されているのは規範意識の強弱であり、規範意識が弱くなった社会状況においては、個人が必ずしも自由な選択権を有しているとは限らず、かえって不安定な精神状況に陥ることによって、犯罪行為にはしりやすくなる危険性を憂慮している点に特徴がある。
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