刑事政策の目的
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 04:24 UTC 版)
日本の刑事政策・刑事司法制度の目的は、真実発見と適正手続の保障を両立させることにある。換言すれば、「捜査・公判を通じて事案の真相を解明することにより、真に罪を問うべき者を適正かつ迅速に処罰するとともに、無実の者を罰するという過ちを犯さないこと」である。刑事事件における真実発見の重要性はいうまでもなく、国民からの期待の大きいところでもあるが、真相解明の名の下に捜査機関が人権侵害をなすことはあってはならないのであるから、真実発見も人権保障の手段である適正手続のもとに行わなければならない。この相対立する要請を適切に調和させることこそが、刑事司法の目的である。 包括的には社会の治安・法秩序の維持、個別的には犯罪者の再犯予防・矯正・更生を目的として、目的刑論と応報刑論を混合した刑事政策を採用し、有期刑・無期刑ともに社会復帰を前提とした処遇をしている。執行猶予付きの懲役・禁固の有罪判決を受けた場合は、刑の執行前の段階で刑の執行を一定期間猶予して、社会内で自発的な更生を促し、執行猶予を取り消されることなく猶予期間を満了した場合は、政府機関の刑の執行権は消滅し、刑は執行されない。 懲役・禁固の実刑判決を受けた場合でも有期刑・無期刑ともに仮釈放制度があり、有期刑は仮釈放か満期釈放かを問わず社会復帰を保障され、無期刑も仮釈放制度による社会復帰の可能性は保障(結果は保証しない)されている。死刑は唯一の例外であり、応報刑論を重視した処遇である。 裁判で有罪の実刑判決(犯行時14歳以上20歳未満の場合は少年院送致)を受けた受刑者は、刑務所(犯行時14歳以上20歳未満の場合は少年院)で、犯罪の個人的原因としての、物事に対する根本的な感じ方・考え方と、その現象としての感情や意思とその管理や表現、他者との対話や関係を形成する方法、などの問題点を矯正するための教育・訓練・医療により、問題点を除去または抑制して社会復帰し、社会復帰した人を更生保護制度で支援し、社会に再統合して社会の中で更生や贖罪することを目的としている。
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