共同実施事業の流れ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/11 05:57 UTC 版)
京都議定書の規定では、共同実施の運用に関する詳細な規定や、削減量の認定などについては定められていなかったため、議定書が採択された後の気候変動枠組条約締約国会議(COP)によってその協議が行われた。2001年11月、COP7で承認されたマラケシュ合意によってこれが正式に決定された。ただ、ルールの追加や修正などはこのあとも続けられている。 共同実施事業は、事業を受け入れる国が満たしている条件によって2つに分けられる。2つは事業を行ううえで経るプロセスが異なる。条件は以下の6つである。 a.京都議定書の締約国である。 b.自国の温室効果ガスの排出枠(割当量)を算定し、記録している。 c.温室効果ガスの人為的な排出量および吸収源による除去量を推計するための国内制度を整備している。 d.国として排出枠や炭素クレジットの保有量の管理を行うために、国別登録簿(割当量口座簿)を整備している。 e.直近の排出や吸収に関する目録(国別目録)を毎年提出しており、かつ、第1約束期間について、目録の内容審査に合格している。 f.割当量に関する補足的情報を提出し、吸収源活動(LULUCF)を考慮して割当量への追加及び差し引きを行っている。 すべての条件を満たしていれば、「第1トラック」と呼ばれる簡略化されたプロセスで事業を行うことができる。また、最低限でもa、b、dの3つの条件を満たしていれば、「第2トラック」と呼ばれるやや煩雑な手続きを経て事業を行うことができる。 第1トラックの場合は、事業の実施手続きは事業に参加する国に委ねられる。第1トラックが認められる国は排出削減の認証や科学的な裏付けが制度化されていて不正ができないため、事業を受け入れる国が独自に削減量を算出し、独自に排出削減単位(ERU)を発行することができる。この場合、事業の手続きは国内で排出削減を行う場合に初期割当量(AAU)を発行する手続きと同じになる。また、より公正さを求める場合は、独自の判断で第2トラックの審査を経てERUを発行することも可能である。 第2トラックの場合は、CDMと類似の手続きを経る。まず、投資国の事業主体と受入国の事業主体を中心として、関係組織が協議を行い、事業主体は実施計画とプロジェクト設計書(PDD)を作成する。この後、投資国と受入国の政府にPDDをそれぞれ提出して承認を受ける。次に、認定独立組織(AIE)という第3者機関がPDDの有効化審査を行い、承認されればプロジェクトが決定する。登録の際、最大で35万ドルの手数料を前払いし、これで事前の承認は完了する。ただし、発電量が少ない再生可能エネルギー事業など、規定されている小規模JI事業については、手続きが簡略化される。 この後、事業主体は実際に事業を進める。事業主体はPDDに規定された方法で温室効果ガスの排出量をモニタリングする。AIEは定期的にこのモニタリング結果を審査し、削減量を決定する。この削減量に応じて事業受け入れ国の政府は認証排出削減量(CER)を発行し、事業主体と協議の上でこれを配分する。投資国の事業主体に配分されたERUが、投資国の排出枠に加えられることになる。 また、共同実施については、共同実施監督委員会(JISC)という組織が存在する。JISCは、AIEの認定や、CDM理事会などでの動向を注視しながらCDMの例を参考にJIの制度や認定方法などを修正していき、COP会合でJIの動向について報告をする責任を持っている。これは、JI事業における排出削減や吸収増加の科学的根拠や算出方法が、CDMを参考にしているためである。またAIEの認定に関しては、15の専門領域の中からいくつかを選んでJISCが認定し、そのAIEは認定された分野のJI事業しか扱うことができないようになっている。そのため、JI事業の事業主体はAIEを選ぶことができる。
※この「共同実施事業の流れ」の解説は、「共同実施」の解説の一部です。
「共同実施事業の流れ」を含む「共同実施」の記事については、「共同実施」の概要を参照ください。
- 共同実施事業の流れのページへのリンク