児童労働の制限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 07:05 UTC 版)
「第一インターナショナル綱領」の記事における「児童労働の制限」の解説
また、十九世紀社会は現代社会と同様に児童労働と子どもの貧困が最も深刻化した時代であった。あらゆる先進工業国が児童を酷使し、搾取し、虐げることを経済発展の糧としてあらゆる形態の人権侵害を恣にした。 一方、当時の社会では労働者階級に属す十八歳未満の児童が労働するのは一般的であった。古代中世から徒弟労働が近代工業社会にいたってもなお存在していたのである。徒弟修業には、技術習得の機会を与える教育的効果、そして人間として一人前にしていくという育成的な場を提供していた。したがって、こうした過酷な情勢に対して、IWAは「合理的な社会状態のもとでは、九歳以上のすべての児童は生産的な労働者とならなければならない。食うためには労働しなければならず、しかも頭脳によってではなく、手によって労働しなければならない」と言及し、児童労働に対して「現実主義」の立場を取った。ただし、「九歳から十七歳までの者を夜間労働や健康に有害なあらゆる職業に使用することは、いっさい法律によって厳重に禁止されなければならない」し、「資本のもとで歪められた忌まわしい形をとって」酷使して使いつぶすという資本主義経済に対して痛烈な批判をおこなった。 IWAは「労働が教育と結合されないかぎり、両親や企業家に年少者の労働の使用を許してはならない」と主張し、鋭いアンチテーゼを提出している。 児童を三つの等級に分けて区分し、別々に取り扱うことを提唱した。すなわち、第一級は九歳から十二歳までとしその使用を二時間に制限すること、第二級は十三歳から十五歳までとし四時間に、第三級は十六、十七歳として一時間以上の休憩を与えることを前提に六時間に制限することを提案した。そして労働を制約して自由な生活時間を約束することに加えて重要なことが教育を与えることである。 IWAは「労働者のひとりひとりは、窮迫がせまってやむなくされる非行を避けることができない。労働者はあまりにも無知なため、子どもの真の利益や人間の発達の正常な条件を理解できない場合が非常に多い」と述べる一方、「知的労働者は、自分の階級の将来、したがってまた人類の将来がひとえに若い労働者世代の育成にかかっていることを、十分に理解している」として児童問題の重要性を強調し、そして教育権を次のように語る。「初等学校教育は、おそらく九歳に達するより早くから始めることが望ましいであろう。児童と年少者の権利は守らなければならない。かれらは自分でそれを守るために行動することはできない。だから、かれらに代わって行動することが社会の義務である」。知育、体育、技術教育を軸として年齢に基づく発達学習を受けるプログラムが最適として提唱した。この技術教育を通じて、やがて製造の現場で通用する技術力を養い、製品を製造・販売して売り上げを小遣いとして若い生活を満喫できるように図り、やがて将来の飛躍を志していくように育成するべきであると認識を提示している。 「児童労働」、「教育権」、「ブラックバイト」、および「オリバー・ツイスト」も参照
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