作画スタイル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 09:43 UTC 版)
「サブリナ (コミック)」の記事における「作画スタイル」の解説
『サブリナ』はテーマに合った独特なスタイルで描かれている。単純化された人物と幾何学的な背景、四角く区切られた画一的なコマ割りで特徴づけられるスタイルは、現代社会を舞台にしていながら「異世界的」な印象を与えるとされた。正確に計算された簡素な構図は「ハウツーマニュアルか避難経路図を参考にしたようだ」と言われた。前作『ベヴァリー』ではパステルカラーも用いられたが、本作では内容に合わせて茶色、緑、灰色のような淡く沈んだカラーパレットが選ばれた。塗りは平坦で陰影やハッチングは見られない。横尾忠則は「気分が重くなる薄暗い色彩の不可解さに翻弄されてしまった … この色彩感覚は素晴らしい」と評した。 登場人物は最小限の線ですっきりと描かれるが、黒穴のような目は質感に欠けており、体型は積み木を重ねたかのようである。外見的に無個性なキャラクターは互いに区別しづらく、特に全員が戦闘服と戦闘帽を着用している軍事基地のシーンではそれが顕著である。一見すると単純すぎる印象を受けるが、ドルナソが精巧に組み上げた人物画には現実の人間の存在感がある。緊迫した、あるいは悲痛な状況においても、彼らは微笑みのような複雑な表情を浮かべている。表情は口や眉のちょっとした傾きによって印象が大きく変わるため、多大な注意を払って線を引いているという。エド・パク(英語版)の評によると、一見すると際立ったところのない単純なキャラクターデザインが「どういうわけか、彼らの恐るべき苦痛を一段と深めている」。翻訳家の鴻巣友季子は、性別を表すアイコンすら排除された能面のような登場人物を「女性の胸などを強調する日本の漫画からすると、本作の絵柄はむしろ特異に映る」と評し、本作を「静謐な爆弾」と呼んだ。 四角いコマを格子状に整然と並べたコマ割りが全編で採用されている。コマの数はページあたり2コマから24コマで、コマの大きさによって語りにアクセントがつけられる。たくさんの細かいコマにふきだしが詰め込まれたページも多い。このレイアウトは日本やアメリカの一般的な漫画とは異なるもので、単調で窮屈な印象も受ける。だが原正人は画一的なコマの並びが「YouTubeやTwitter、Google画像検索などの画面を連想させ、妙な迫真性を帯びる」と述べている。またこのコマ割りは、人物やシーンが変化する途中のあいまいな瞬間を効果的に切り取ることができるとも評されている。 ドルナソの作風に最も大きい影響を与えたのはコロンビア・カレッジ・シカゴ(英語版)で師事した漫画家イワン・ブルネッティ(英語版)である。同じくシカゴ在住で交友もあるオルタナティヴ・コミック作家クリス・ウェアからの影響も指摘されるが、レイアウトや感情表現における抑制はウェアにはない特徴である。大学以前にはコミックにそれほど親しんでいたわけではなく、影響としてはむしろテレビや映画の方が大きいという。
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