仲裁裁定を巡る動き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 14:20 UTC 版)
「南沙諸島海域における中華人民共和国の人工島建設」の記事における「仲裁裁定を巡る動き」の解説
7月13日、中国政府が徴用した中国南方航空と海南航空の民間旅客機2機が海南島の海口国際空港より南沙諸島に向けて試験飛行し、それぞれミスチーフ礁とスビ礁の飛行場に着陸し、空港利用が民間によるものと中国中央電視台が中継レポートして中国に主権があることをアピールした。 同日、中国に対抗して十一段線を主張している台湾(中華民国)の蔡英文総統は、この裁定は「(台湾の)権利を深刻に傷つけた」と批判し、軍艦(康定級フリゲート)を太平島に派遣した。また、「中国の台湾当局」という表現が裁定文中にあることに対して台湾の立法院(国会)が抗議をしている。8月16日には、葉俊栄内政部長が太平島を視察のため訪問した。 フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、7月14日に戦争という選択肢はないとして中国と二国間協議を開始するために、フィデル・ラモス元大統領を特使として訪中させると発表した。7月15日からモンゴルで開かれたアジア欧州会議 (ASEM) の場で中国側から裁定を無視しなければ二国間協議に応じない要求があったため、フィリピンのヤサイ外相は、7月19日に二国間協議をフィリピン側が拒否したことを表明した。同日ドゥテルテ大統領はアメリカ議会の代表団とマニラで会談し、フィリピンは「譲歩はしない」との姿勢を示し、領有権問題で「中国と交渉する予定はない」としていたが、25日の就任後初の施政方針演説で南シナ海を「西フィリピン海」と呼ぶ一方で「中国海としても知られている」と述べるなど中国への配慮を打ち出した。8月10日・11日に大統領特使としてフィデル・ラモス元大統領が香港を訪問し、中国の全国人民代表大会外事委員会主任委員の傅瑩と非公式に会談した。 ラオスのビエンチャンで開催された東南アジア諸国連合 (ASEAN) 外相会議は、7月25日の共同声明で仲裁裁判所の裁定についての言及を見送った。また、同じビエンチャンで直後に開催されたASEAN地域フォーラム (ARF)閣僚会議と東アジアサミット (EAS)外相会議の両会議でも、日本やアメリカなどが会議で裁定に言及したものの、議長声明では裁定に言及されなかった。 10月20日にドゥテルテ大統領は、北京で習近平国家主席(党総書記)と首脳会談を行った。21日には首脳会談の共同声明を発表し、南シナ海問題に関して「関係主権国による直接交渉」で解決すると明記したが、仲裁裁定への直接の言及は避け、棚上げされた形となった。また10月26日に訪日したドゥテルテ大統領は、首相官邸で安倍晋三首相と首脳会談を行い、法の支配の重要性や仲裁裁定の尊重について確認して南シナ海問題の平和的解決に向けて協力することで一致した。
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