人的資本と「生産者の生産」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/11 15:10 UTC 版)
「資本経済」の記事における「人的資本と「生産者の生産」」の解説
ルイ・アルチュセールは、生産諸条件の再生産は、企業の外部でなされるとしたが、生産諸関係の再生産が経済次元ではなく、学校装置や宗教装置、家族装置などのイデオロギー的国家装置においてなされているとした。ブルデューは学校教育分析をもって「生産者の生産・再生産」が学校でなされていると捉えた。それは生産物の生産とは異なる経済的生産が、文化的再生産と社会的再生産によって構造的に構成されているということだ。1960年代の人的資本の形成が労働生産性や組織管理に要されるとした教育の経済的還元を超えるもので、主に、シカゴ学派の経済を社会論的に把捉する仕方への批判から開かれていく。個人の文化資本の「領有appropriation」(学歴や資格や趣味、判断の仕方など)が社会的な位置として重要なファクターであることを解析した。つまり、資本経済は、企業外の諸条件を生産し再生産することを含む。それは労働経済ではない、諸個人の芸術や趣味への美的判断にも関わる個人スキルのことである。科学技術の技術者スキルも経済へ関与する。デヴィッド・ハーヴェイは、資本の蓄積様式は第一次が生産過程内の固定資本(財)、第二次が橋や道路や建築の建造環境、第三次が科学技術、教育・医療などであるとした。現代社会世界を対象にして、マルクス主義も非マルクス主義も、経済世界は商品=生産物の生産にとどまるものではない、文化基盤、人の形成、都市形成、さらに環境へも関わるとされていく。ラディカル・エコノミクス派のボールズ/ギンタスは出身階級と成績達成・学歴との社会的地位の再生産経済を分析する。生産過程に従事するだけの労働者ではない、労働者の生活様式全体が考慮された。物ではない人の側の経済構成が、学校教育批判の教育理論によって、再生産論と教育資本論とともに考証された。基本的に「生産物の生産」と「生産者の生産」とが結合して経済生産はなされるが、1970年を挟んで人類学的考証とともに「再生産」理論が現代社会的分析において理論視座を転回させ、その中で「資本」概念の転換と拡張がなされた。
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