井上良夫とは? わかりやすく解説

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井上良夫(いのうえ・よしお)

1908年(明41)、福岡県北九州市生まれ。父の量永は鳥井造船所庶務課長をしていたことがあり、江戸川乱歩と同じ職場だった。また、長女のみつ代は江戸川乱歩友人鈴木茂結婚している。
愛知県立五中では江戸川乱歩後輩にあたる。中学時代には探偵小説同人誌面影」を刊行
1933年(昭8)以降、「ぷろふいる」に「英米探偵小説プロフィル」「傑作探偵小説吟味」「アガサクリスティ研究」など、欧米作品評論活動おこない戦前海外作品の翻訳動向大きな影響与えた
1932年(昭7)に「探偵小説」に森下雨村によって訳出されたクロフツ」の訳に協力したほか、自らも1935年(昭10)に「赤毛のレドメイン一家」としてフィルポッツの「赤毛のレドメイン家」を翻訳
さらに、クロフツ「ポンスン事件」(1936年(昭11))、ブッシュ「完全殺人事件」(1936年(昭11))、クイーンYの悲劇」(1937年(昭12))、スカーレット二重密室殺人事件」(1940年(昭15))など古典的名作多数翻訳
1945年(昭20)、死去



井上良夫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/09 13:49 UTC 版)

井上 良夫
いのうえ よしお
誕生 (1908-09-03) 1908年9月3日
福岡県若松市
死没 (1945-04-25) 1945年4月25日(36歳没)
職業 評論家翻訳家、教員
言語 日本語
国籍 日本
最終学歴 名古屋高等商業学校
主題 探偵小説
活動期間 1933年 - 1942年
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井上 良夫(いのうえ よしお、1908年9月3日 - 1945年4月25日)は、日本探偵小説評論家翻訳家。 1930年代のいわゆる「本格ミステリの黄金時代」の海外作品を、日本に多数紹介した。戦前における最もすぐれた探偵小説評論家といわれる[1]

経歴

1908年(明治41年)9月3日、福岡県若松市(現・北九州市)に生まれる[2]

1926年(大正15年)、愛知県立熱田中学校(現・愛知県立瑞陵高等学校)卒業。名古屋高等商業学校(現・名古屋大学経済学部)に進学し、1930年(昭和5年)に卒業。バス会社に入社するが、名古屋市営バスと併合されて解散になったため、1937年(昭和12年)から名古屋市立白鳥尋常高等小学校(現・名古屋市立白鳥小学校)教員、1941年(昭和16年)から名古屋女子商業学校(現・名古屋経済大学市邨中学校・高等学校)教師(英語担当)[2]

学生時代から原書にあたって英米の「黄金時代」の探偵小説に親しむ[3]。『探偵小説』(博文館)1932年(昭和7年)1月号に掲載されたクロフツ森下雨村訳『』の翻訳作業を手伝い、その縁で、1933年(昭和8年)5月に創刊された探偵小説専門誌『ぷろふいる』に、雨村の推薦で評論を寄稿するようになる。第4号に掲載された「名探偵を葬れ!」が探偵論壇へのデビュー作で、第5号から「英米探偵小説のプロフィル」を連載、海外の未翻訳作品を次々と紹介した[4]。1935年(昭和10年)はじめごろから江戸川乱歩と文通を始める[5]

1935年、柳香書院から乱歩と雨村の共同編集による『世界探偵名作全集』が企画されると、収録書の選定に協力し、自らもイーデン・フィルポッツ赤毛のレドメイン一家』、ロナルド・ノックス『陸橋殺人事件』を翻訳している。ただし、この全集は1936年(昭和11年)までに5冊を出しただけで中絶した[6]。以後、翻訳家としてもクロフツ『ポンスン事件』、ブッシュ『完全殺人事件』、バーナビイ・ロスYの悲劇』などを次々と刊行している[7]

1942年、フィルポッツ『闇からの声』の翻訳を、乱歩の助力で刊行[8]。これが生前最後の翻訳書となった。

1945年(昭和20年)4月25日、肺結核のため死去[9]。乱歩は、1951年(昭和26年)刊行の評論集『幻影城』の献辞を、井上に捧げている[10]

評論集は戦前にぷろふいる社、戦後に新探偵小説社によって企画されたが、いずれも実現せず、没後49年目の1994年になって国書刊行会から、「英米探偵小説のプロフィル」「傑作探偵小説吟味」「作家論と名著解説」など主要な評論を収めた『探偵小説のプロフィル』が刊行された[11]。また、戦争中に江戸川乱歩と続けられた、乱歩のいうところの「英米探偵小説の読後感や探偵小説本質論について」の「非常識なほど長い手紙のやりとり」(『幻影城』献辞)[10]は、戦後に中島河太郎が個人誌『黄色の部屋』上で乱歩の許可を得て発表(第5号 - 第12号、1951年8月 - 1954年9月)[12]、その後、「探偵小説論争」と題して『江戸川乱歩全集』第22巻『わが夢と真実』(講談社、1979年)[13]、『江戸川乱歩推理文庫』第64巻『書簡 対談 座談』(講談社、1989年)[14]に収録された[3]

著書

翻訳

  • 赤毛のレドメイン一家』(イーデン・フィルポッツ、柳香書院、世界探偵名作全集1) 1935年10月、のち再刊(雄鶏社) 1950年7月
  • 『陸橋殺人事件』(ロナルド・ノックス、柳香書院、世界探偵名作全集5) 1936年3月、のち再刊(早川書房世界探偵小説全集) 1954年6月
  • 『ポンスン事件』(F・W・クロフツ春秋社) 1936年6月、のち再刊(雄鶏社、おんどりみすてりい) 1950年6月
  • 『完全殺人事件』(クリストファー・ブッシュ、春秋社) 1936年12月、のち再刊(雄鶏社、おんどりみすてりい) 1950年10月
  • 『スターベル事件』(F・W・クロフツ、末広書房) 1937年2月、のち再刊(早川書房、世界探偵小説全集) 1954年5月
  • Yの悲劇』(バーナビイ・ロス、春秋社) 1937年4月、のち再刊(エラリ・クイーン名義、新樹社、ぶらっく選書) 1950年6月
  • 闇からの声』(イーデン・フィルポッツ、大元社) 1942年10月、のち再刊(早川書房、世界探偵小説全集) 1956年2月

脚注

  1. ^ 真田 2017, p. 259.
  2. ^ a b 山前 1994, p. 352.
  3. ^ a b 山前 2000, p. 49.
  4. ^ 山前 1994, p. 354.
  5. ^ 山前 1994, p. 355.
  6. ^ 山前 1994, pp. 355–356.
  7. ^ 山前 1994, pp. 356.
  8. ^ 山前 1994, p. 358.
  9. ^ 山前 1994, pp. 352–353.
  10. ^ a b 山前 1994, p. 351.
  11. ^ 山前 1994, pp. 359.
  12. ^ 江戸川 1989, pp. 286–287, 中島河太郎「解題」.
  13. ^ 江戸川乱歩; 井上良夫「探偵小説論争」『江戸川乱歩全集 第二十二巻 わが夢と真実』講談社、1979年11月20日、195-240頁。 
  14. ^ 江戸川 1989, pp. 85–179.

参考文献

外部リンク



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