中所得国の罠
別名:中所得国のワナ、中所得国のわな
英語:Middle-income trap
その国家の構造的な問題などによって、中所得国が高所得国になることができずに経済発展が停滞する状態を指して用いる通称。
一般的に低所得国から中所得国へは、海外からの投資拡大や人口の増加といった要因のみで移行できるとされている。しかし、中所得国から高所得国へは、国内での需要拡大を中心とした持続可能な成長が必要だとされる。
具体的には自国内での人材開発やイノベーションの主導、産業構造の高付加価値化、あるいは市場の自由化と民間企業の競争環境の整備などが不可欠とされている。
中所得国の罠に嵌っている国家は、中南米や中東に多い。
また、近年のアジアでは、人口の増加を背景とした低賃金の労働力などを武器に低所得国から中所得国へと発展をしている一方で、中所得国から先進国(高所得国)へと移行できない国がみられることから、中所得国の罠に嵌りつつあるという見方もある。
関連サイト:
東アジアの金融危機 - 世界銀行東京事務所
中所得国の罠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/24 06:44 UTC 版)
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中所得国の罠(ちゅうしょとくこくのわな、英:middle income trap)は、開発途上国(発展途上国)が一定規模(中所得)にまで経済発展した後、成長が鈍化し、高所得国と呼ばれる水準には届かなくなる状態ないし傾向を指す通称。2007年に世界銀行が『東アジアのルネッサンス』にて、同現象を形容する言葉として用いたのが初出である[1][2]。
概要
新興国が低賃金の労働力等を背景として飛躍的に経済成長を遂げ、中所得国(一人当たりGDPが3,000ドルから10,000ドル)に達するも、人件費上昇によって工業品の輸出競争力が失われて成長が鈍化する傾向を形容した言葉である[1]。
世界的に見て、この傾向は顕著であり、アルゼンチン、ブラジル、チリ、マレーシア、メキシコ、タイといった国々が高度経済成長を維持することができず、一人当たりGDPが10,000-12,000ドルを突破できない、もしくは時間が掛かった[1][3]。
こうした傾向は開発経済学でゆるやかに共有されている概念であり、低所得国から中所得国となった国は多いのに対し、中所得国から高所得国となった国は少ない。安定成長を続けた諸国・地域として日本、アメリカ、韓国、香港、シンガポールが挙げられる[1]。2011年にアジア開発銀行が発表した『アジア2050』では2050年には世界全体のGDPの内52%をアジアが占める見通しだが、中所得国の罠に陥った場合には31%に留まるという[2]。
一般に中所得国の罠を回避するためには経済構造の転換が必要だとされる。産業の高度化のほか、「規模の経済」や中産階級の拡大による内需や購買力の上昇も重要視される。また、そのためにはインフラや教育への投資も必要となる[2][1][4][5]。1990年代末に中所得国の罠に陥った韓国や台湾は電機やIT分野で産業の高度化を行い、高所得国入りを果たした[3]。
脚注
- ^ a b c d e 内閣府「世界経済の潮流 2013年II」中所得国の罠の回避に向けて 内閣府
- ^ a b c 「中所得国の罠と所得格差の是正 」 大泉啓一郎 2014年07月01日 日本総研
- ^ a b 金融経済用語集「中所得国の罠」 iFinance
- ^ “Seminar on Asia 2050”. Adb.org (2011年10月18日). 2014年8月11日閲覧。
- ^ “Asia 2050: Realizing the Asian Century”. Adb.org (2013年5月9日). 2014年8月11日閲覧。
関連項目
- 中所得国の罠のページへのリンク