中動態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/11 03:48 UTC 版)
中動態(ちゅうどうたい)、あるいは、中間態(ちゅうかんたい[1][2][3])、(古代ギリシア語: μεσότης [mesótēs]メソテース、ラテン語: [genus] mediumメディウム、フランス語:voix moyenne、英語:middle voice)は、インド・ヨーロッパ語族の態 (英語: voice) のひとつで、動詞の表す行為が、その行為者自身に及ぶ場合にとる形態的特徴のことである[4]。形は能動態であるが、受動態の意味を表わす態を指すとも説明される[3]。以前は、voiceを態でなく、相(そう)とも訳しており、中動相(ちゅうどうそう)とも呼ばれた。
- ^ 実際には単なる慣用になってしまい、なぜ中動態を使うのか判然としない場合も多い[要出典]
- ^ なお、受動態も時と共に様相が変わって行き、また、言語ごとにも異なる[11]。
- ^ 言語学者の小島剛一は、逐語訳での「中動態」よりも、「再帰態」か「自己態」と翻訳するほうがよいとする[11]
- ^ ただし、トルコ語には、再帰動詞語幹をつくる接辞がある[20]。
- ^ 以下は、en:Voice (grammar)15:18, 3 November 2022 から訳された。
- ^ 例えば、「親に死なれた」を受動態で訳すことは出来ない。また、ヨーロッパ諸語の受動態のうち、動作主を示さずに動作の目に見える結果のみを表わす用法は、日本語にも昔から具わっている。たとえば、「黒板に字が書いてある」という表現がこれに該当する。これに対して、「黒板に字が書かれている」は擬似受動態である[39]
- ^ 日本語の情動相には「風に吹かれて歩く」「この子は、母親に死なれた」のような用法があるが、ヨーロッパ諸語の受動態でこれを翻訳出来ない。また、日本語では「子供が誘拐された」と「子供を誘拐された」は意味が違うが、これもヨーロッパ諸語の受動態で訳し分けることは出来ない[11]。
- ^ 國分は「思考は言語によって規定されている。表現されるために言語が必要であるだけでなく、その表現のための形態が思考の過程そのものの形態である。だから、言語化される以前の思考が心の中にあって、表現される際に言語化されるのだと考えることはできない。」と書く[40]が、この文章は、無用な擬似受動態で溢れている上に「形態」が何を指すのか意味不明で、奇を衒うのが趣味で読者を煙に巻いては悦に入っている[36]。
- ^ 「子供に泣かれて困った」「犬に吠えられた」「敵に謀られた」
- ^ 「財布が落ちている」「客が坐っている」「黒板に文字が書いてある」
- ^ ラルース言語学用語辞典、大修館書店、1980、p.279.
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- ^ 大亦菜々恵「ヒッタイト語の自他動詞対データと収集・分析の問題点」東京大学言語学論集』42 (2020.9) e41-e50
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- ^ 國分功一郎 〈「する」でも「される」でもない世界〉精神看護 17巻1号 (2014年1月発行)pp.81-89、同概要
- ^ a b c d e f F爺・小島 剛一のブログ「能動態・中動態・受動態(続)」2017/04/15 18:49
- ^ 「「我々は、中動態を失うことによって何を得たのか?」,精神看護 17巻6号 (2014年11月発行)pp.90-96
- ^ 小島剛一『再構築した日本語文法』第22章〈動態動詞の「-てある」で終わる結果相〉、p.315-320,342-347、ひつじ書房 、2012.
- ^ a b c d F爺・小島剛一のブログ「日本語が危ない(3)」の「3.2.4.2.擬似受動態」の項、2014/03/07 02:17
- ^ 國分功一郎 〈「する」でも「される」でもない世界〉精神看護 17巻1号 (2014年)p.81
- ^ 2017年4月2日
- ^ a b c d e f g h F爺・小島 剛一のブログ「能動態・中動態・受動態(3)」2017/04/19 19:12
- ^ a b F爺・小島剛一のブログ「能動態・中動態・受動態(4)」2018/02/14
- ^ 「第十六回小林秀雄賞」
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