両生類および魚類の中枢神経系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 16:45 UTC 版)
「膜電位感受性色素」の記事における「両生類および魚類の中枢神経系」の解説
Salzbergら (1983) はツメガエル(英語版)の神経性下垂体 (neurohypophsis) をmerocyanine-rhodanine色素 (NK2761) で染色して、活動電位を吸光シグナルとして記録した。この実験で、後葉から得られるシグナルはスパイクのシグナルとそれに続く方向が逆向きでやや持続時間の長いシグナルの2つの成分から成ることが見いだされた。この遅いほうの成分は外液の低Ca2+ 濃度で抑制され、TTXの添加では速い成分、遅い成分とも消失あるいは抑制される。続く実験で、スパイク状の速い成分は神経終末の活動電位を反映した色素の吸光変化であり、遅い成分は色素の吸光変化によるものではなく、神経終末からの神経ホルモン分泌過程を反映した光散乱の変化であることが示された (Salzberg, et al, 1985 ; Obaid, et al, 1989 ; Salzberg and Obaid, 1988)。なお、Salzbergら (1985) は同じタイプのシグナルをマウスの神経性下垂体からも記録している。興奮-分泌連関を光学的シグナルとして捉えたことは神経分泌現象の研究に新しい測定方法を打ち出したものであり、その点でも注目すべきものである。さらに空間分解能を上げることにより興奮-分泌過程をより詳細に解析できる可能性が期待できる。カエルの中枢神経系では、Grinvaldら (Grinvald, et al, 1984) によって視蓋 (optictectum) のニューロン応答が光学的方法で測定された。これは、カエルを“まるごと”のままで行う in situでの測定であり、光学的測定方法としては、その適用面での新しい展開の1つである。カエルの頭蓋骨を部分的に開けて視蓋部を露出し、そこを螢光色素 (styryl dyes) で染色して、眼球の散発的な光照射(フラッシュ)によって引き起こされる視蓋皮質の電位応答を螢光シグナルとして記録するというやり方である。“まるごと”の動物を用いる実験で問題となるのは、雑音である。その原因として、Grinvaldは呼吸運動と心拍動をあげている (Grinvald, 1985 ; Grinvald, et al, 1988)。さらには、 脳皮質血管内の不連続的な赤血球の流動による影響も考えられる。Kauerら (1987) は、嗅上皮の臭気剤刺激によって引き起こされる嗅球におけるニューロン応答を測定した。この実験では摘出標本でなく、嗅上皮と嗅球を露出した“まるごと”のサンショウウオが用いられ、嗅上皮に amyl acetateとcamphorの気体を吹きつけて刺激した。先のOrbachとCohen (1983) の電気刺激による測定では、ニューロン応答のシグナルは嗅球のほとんど全域で記録されているが、amyl acetateとcamphorによる刺激では、その両者の間でシグナルの大きさには違いがみられる。応答はいずれの場合も外顆粒層と内顆粒層に限局しており、シグナルは外顆粒層で大きく内顆粒層では小さい。また、神経線維層および糸球体層には応答がみられない。これは、電気刺激と大きく違うところであり、実験的電気刺激と生理的条件という自然刺激による応答の空間的パターンの違いをよく示している。魚類では、Konnerthら (1987) によってエイ (Raja erinacea) の小脳スライスの平行線維についての測定がなされている。この論文では、RH155とRH482のシグナルの波形の違いから、neuronとgliaの染色性についても解析されている。なお、このほか金魚の視蓋部についてManisとFreeman (1988) よる測定があるが、この実験ではシナプス電位が螢光シグナルとして記録されている。
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