世界金融危機後
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/11 22:11 UTC 版)
「名目所得ターゲット」の記事における「世界金融危機後」の解説
リーマンショックと世界金融危機の影響でユーロ圏や先進諸国の経済停滞がおこるなか、中央銀行による名目所得ターゲット導入の議論が高まっている。アメリカでは、FRBが量的緩和やインフレ目標導入など大胆な金融緩和政策を6年以上継続させている2014年現在の景気は脆弱である。緩やかな雇用の回復も労働参加率の低下によるものとの見解を否定できず、経済は回復しているとは言い難い。2014年において米国は景気回復にはほど遠く、欧州はといえば全く回復していない。両者は大不況の7年目に突入しているのだとポール・クルーグマンは述べる。日本は欧州よりも少し良いが、欧州の状況が悪いので相対的に良く見えているだけである。 米国では国民貧困線が15%に及ぶが、これに対処するため2014年6月IMFが最低賃金を引き上げるよう米国政府に要請した。リーマンショック後の大不況からの米国経済の立ち直りは他の先進国と比べて良いとしながらも、2014年時点での米国の貧困率は貧困率の国際水準や米国の歴史的貧困率水準と比較して低いことや、労働参加率の低下など労働市場が依然として弱いことがIMFによって指摘されている。IMFの報告では、最低賃金の上昇は米国の何百万ものワーキングプアの所得を改善し、最低賃金水準労働者の可処分所得を有意に増加させることができるとしている。 「最低賃金#経済学者による最低賃金引き上げ論」も参照 また総需要の視点から言えば、中央銀行による公開市場操作や大規模な資産購入が著効するのは、その金融政策が永続的であると庶民が認識した場合だけである。物価と所得レベルの上昇が永続的だと投資家らが期待すれば、彼らは低利率の資産から高利率・非流動資産へとポートフォリオを変えるとし、この種の主張はマーケット・マネタリストのみならずポール・クルーグマン、マイケル・ウッドフォードらにも支持を得ている。インフレターゲットなど旧式の金融政策では太刀打ちできない世界的な景気悪化と流動性の罠を前にして、名目所得ターゲットなどの前衛的な金融政策が求められている[誰?]。 2015年6月にはローレンス・サマーズも名目所得ターゲット支持に含みをもたせた。サマーズによれば、名目所得ターゲットはインフレーションターゲットよりも2つの点で勝っているという。インフレ調整に依存しない目標値は理にかなっていること。また実質成長率が低いときに実質金利を下げることが保証されることである。
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