世界金融危機と会計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 23:08 UTC 版)
ビッグ8と呼ばれる大手会計事務所8社は、監査業務に加えてコンサルティング業務を増加させた。監査対象の企業からもコンサルティング業務を受注したため、監査人の独立性が問題とされるようになった。1980年代以降のアメリカの会計不正の主な原因としては、(1) 経営者の報酬が株価に依存し、不正な操作で株価をあげる動機があった。(2) 不正を誘発するように株式市場が好調であった。(3) 不正を防ぐべき会計事務所が、監査業務とコンサルティング業務の利益相反を起こしていた、などがある。こうした状況下で、エンロン、ワールドコムなどの大手企業が会計不正によって破綻した。 規制強化にもかかわらず、その後も不正は続いた。アメリカでは、エンロンと類似の事件を防ぐために、住宅ローンの国策会社であるフレディマックとファニーメイがバランスシートを縮小した。その影響で住宅ローンに民間業者が参入し、民間業者が導入したサブプライムローンは住宅価格の上昇に後押しされて2003年以降に急拡大をした。すでに2005年にはサブプライムローンのバブルが指摘されていたものの、格付け機関はリスクを知りつつサププライムの証券に高い格付けを与え続けた。リスクを警戒し、2006年から住宅ローン売買を減らした投資銀行もあったが問題の解決にはならず、2008年にはリーマンブラザーズの倒産をきっかけにサブプライム住宅ローン危機が起きた。 サブプライム危機の一因には、時価評価もあった。取得原価主義であれば、機関投資家は株式などの金融資産で含み益を持つことができる。他方で時価評価主義では、金融資産の減価は自己資本減少と機関投資家が発行する株式の減価に直結し、その株式を保有する企業が発行する株式も減価となる。こうして負の連鎖が拡大した。サブプライム危機は世界金融危機に波及し、2008年のワシントン・サミットでG20が金融安定化のための国際会計基準について声明を行い、対応を求められたIASBは会計基準を変更した。この変更で適正手続(デュー・プロセス・オブ・ロー)を取らなかったためにIASBは批判を受け、IASBが推進してきた公正価値会計も批判された。IASBは公正価値会計の全面適用から方針を変更し、調整機関としての活動を増やすこととなった。IFRSは2013年に会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)を設立し、幅広い地域の団体がメンバーとして関与している。
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