世界初の無線音声通信の成功
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/18 04:40 UTC 版)
「フォトフォン」の記事における「世界初の無線音声通信の成功」の解説
ベルは、ヨーロッパに新婚旅行に行った際に、1878年4月25日に『ネイチャー』誌に掲載されたロバート・サビーンの論文で、「セレンに光を当てると抵抗値が変化する」という新発見の特性を知ったものとみられる。サビーンは、電池に接続されたセレンに光を当て、その効果を電流計で確認するという実験を行っていた。ベルは、電流計の代わりに電話の受話器を接続すれば、電流の変化を音として聞くことができると考えたのである。 ベルのかつての助手だったトーマス・A・ワトソンはベル電話会社(英語版)の製造管理者として忙しかったので、ベルは1874年の金星の太陽面通過(英語版)の観測に参加していた機器製造者のチャールズ・サムナー・テンターを週給15ドルで雇い、ワシントンD.C.のL通り1325番地に作った新しい研究所(ボルタ研究所(英語版))で実験を開始した。 1880年2月19日、2人はフォトフォンで音声を伝送することに成功した。金属製の格子を振動板に取り付け、音声に反応して格子が動くことで光のビームが遮断される仕組みだった。変調された光のビームがセレン製の受信機に当たると、ベルはヘッドフォンで、テンターが歌う『オールド・ラング・サイン』をはっきりと聞くことができた。 1880年4月1日、ワシントンD.C.で行われた実験では、ベルとテンターは、路地を約80メートル進んだ所から実験室の後部窓までの間での通信に成功した。6月21日には、太陽光を光源として、約213メートルの距離をクリアに通信することに成功した。エジソンによってアメリカに実用的な電気照明が導入されて間もない時期のことである。後者の実験は、送話管の先に設置された非常に薄い鏡の表面で太陽光を反射させ、言葉を話すと鏡が凸と凹の間で振動し、鏡の表面から受信機に反射する光の量が変わるというものであった。フランクリン・スクール(英語版)の屋上にいたテンターが、研究室にいたベルにフォトフォンを使って話しかけ、ベルは要求された通りに窓から帽子を振ってテンターに合図した。受信機は、セレン受光器を焦点に設置した放物面鏡だった。 この実験は、世界初の無線電話であった。すなわち、最初の無線電話は光による通信であり、電波による音声送信が開発されたのはその19年後のことである。ベルとテンターは、フォトフォンのための光ビームの変調と復調の方法を50種類ほど考案し、その後、グラフォフォン(英語版)(改良版蓄音機)の開発へと移っていった。
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