不確かさと国家標準器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 09:20 UTC 版)
「不確かさ (測定)」の記事における「不確かさと国家標準器」の解説
ある測定器に不確かさを付けるには、上位の測定器が必要であり、また、その上位の測定器に不確かさを付けるには、さらに上位の測定器が必要である。最終的には最も上位の測定器として、国家標準器にたどり着くことになる。最終的にたどり着く先の標準器は必ずしも自国の国家標準器でなくともよく、日本であればアメリカやドイツやフランスやイギリスなど、自国と相互承認のある外国の国家標準器であればよい。もし、この自国との相互承認のある外国の国家標準器にたどり着く測定器について、トレーサビリティを計量行政が認めないとしたら、それはウルグアイ・ラウンドから続く一連の貿易協定などの条約に違反していることになる。1999年には、各国の計量標準について、同等性を相互承認する相互承認協定(英: MRA; Mutual Recognition Arrangement)が締結されている。 1995年に発行したWTO/TBT協定により、計量の標準化にかぎらず、非関税障壁をなくすために工業・各種産業における国際標準化を加盟各国が進める方針で合意されたという歴史的背景があり、そしてそのTBT協定が締結した国際会議がウルグアイラウンドである。 計量トレーサビリティ制度での「不確かさ」の値の決定方法は、計量行政に依存しており、純粋に数学的な統計量である誤差とは意味合いが少し異なる。また、測定分野における各物理量の国家標準器の機械的な性能にも「不確かさ」は依存しており、「不確かさ」は純粋に数学的な量とは異なる。たとえば、同じ測定器を用いて同じ現象を測定していても、測定器のトレーサビリティが異なると、その測定器の不確かさの大きさが変わるのである。だから、トレーサビリティ制度で言う「不確かさ」は、それが測定されていることに意義を持つのである。ある測定器の「不確かさ」を測定できるということは、その測定器の校正はトレーサビリティが保証されているということである。 その一方で、測定値の分散や標準偏差が大きい現象を測定するときには、つまり「不確か」な現象を測定する場合には不確かさの値も大きくなる。そもそも、「不確かさ」の呼称はこのような性質に由来するものである。このため、不確かさは誤差と似たような性質も部分的には持っており、文脈によっては「不確かさ」の意味を「誤差」に近い意味と解釈しても不都合がない場合もある。 また、計量行政ではトレーサビリティ制度の普及という実用的な理由からも、利用者が仮に「不確かさ」を「誤差」と解釈しても、あまり不整合が出ないように行政が対応している。それらは「不確かさ」本来の意味ではなく、あくまで行政上での工夫である。一般の利用者には、そこまでの区別が必要ではないが、高い水準の測定を行いたい場合、あるいは国家標準器にトレーサビリティ制度上で近い測定器を利用する場合には、「不確かさ」と「誤差」との意味の区別が必要である。
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