ルーの槍の様々な異称
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/04 02:21 UTC 版)
「ルー (神)」の記事における「ルーの槍の様々な異称」の解説
アイルランド文献での槍名(要約) アイルランド古来の文献では、四秘宝のルーの槍やヌアザの剣に特に固有名は無い。 四秘宝のルーの槍 四秘宝の一つに数えられるルーの槍(アイルランド語: sleg)は、≪バリモートの書(英語版)≫所収『トゥアハ・デ・ダナーンの四秘宝(英語版)』本文で「ルーやその槍を手にした者に対し戦(の優位を)保ちつづけることこれかなわず」とされる、不敗の槍である。トゥアハ・デ・ダナーンが北方の地ロフラン(英語版)の都市ゴリアスからルーの槍を持込んだと、『アイルランド来寇の書』(en:Lebor Gabála Érenn)に記される。 アッサルの槍 アッサルの槍、ガエ・アッサル(アイルランド語: Gae Assail)は、ルーが、自分の父親キアンを殺された賠償のひとつとして、トゥリル・ビックレオ(Tuirill Piccreo/Biccreo)から要求した槍。イヴァル(イチイの樹の意 Ibur)の呪文で命中し、「再イチイ」を意味する逆呪文アスィヴァル(Athibar)で召還できる。《アイルランド来寇の書》(¶319および第LXV詩) の原文にしたがえば、峰ばった黄金のアッサルの槍、ひとたび血をこぼせば後誰も生かしてはおかず、イヴァルと唱えて投げればけっして逸れないこと疑うべくもなく、アスィヴァルと呼べばたちどころ戻ってくる という必殺必中の槍である。また、ピサール王の槍ともされている。 アーラーワル(アラドヴァル) ペルシアの王ピサルが所有する槍アラドヴァル(?)〔古語発音〕、アーラーワル(?) 〔現代発音〕(O'Curry 英訳: Ar-éadbair, O'Duffy 英訳: Areadbhair 原文 Aɼéadḃaiɼ)は、物語『トゥレンの息子たちの最期』(18世紀以降の写本)に登場する、ルーがトゥレンの息子たちから求める賠償のひとつである。その槍は、穂先を水をはった大釜に漬けこんでおかないと都市が焼けて(溶けて)しまうという。この槍名は「屠殺者」や「殺戮者」 (Slaughterer) とも訳出されている 。 森一番のイチイの名木 ルーの槍は、「森でこよなきすばらしき(イチイ)の樹」 と『トゥレンの息子たちの最期』で詩人に扮したブリアンに歌われる。これとほぼ同じ文言の美称「森の名だたるイチイの樹」が、やはりルーの槍の呼び名として、16世紀のある写本のあるくだり(TCD所蔵1336本(旧H 3. 17本)の723欄)に言及されるのだが、重要なのは、そのくだりではルーの槍が、アルスター戦士の時代のケルトハルのルーンと同一であり、別時代(西暦260年頃)のコルマク・マク・アルトを失明させたクリヴァル(Crimall)と同一だと示していることだ。 ルイン アラドヴァルと称すルーの槍と、アルスター伝説の勇者ケルトハルやドゥフタハが用いるルーン(Luin)と呼ばれる槍は共通した性質を持っている。また、#森一番のイチイの名木と名づくルーの槍とルインはそもそも同じ槍だったという伝承があることは上述した。 5本に分かれた槍 ルーは、疲れ果てたクーフーリンに代行して戦うために『クアルンゲの牛捕り』 に現れるが、そのときに五尖槍を携えている。黄色い巻き毛のルーは、次のようないでたちだった。 その者は緑のマントを身に纏い、マントには白銀のブローチが胸にし、その白肌じかに純金で赤刺繍した王風の膝まで届く絹チュニクを着ていた。白黄銅の硬い丸鋲突起がある黒盾を持ち、五尖槍と叉分かれの投槍を手にしていた。 この五尖槍は、特にルーだけでなく、伝説群の垣根をこえて何人もの英雄が普通の武器と所持している。尖端こそ5本に分かれているが、これはもっとも普通に槍をさす種類の武器である。
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