ヨーロッパにおける公の称号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/16 01:01 UTC 版)
詳細は「爵位#ヨーロッパにおける爵位」を参照 公は、東アジアにおける五等爵の公から転じてヨーロッパで貴族の称号として用いられるいくつかの語の訳語としても用いられる。公と訳されるヨーロッパ諸語は、大きく分けてラテン語で「第一人者、君主」を意味するprinceps(英語のprince)に関連するものと、同じくラテン語で「指導者、指揮官」を意味するdux(英語のduke)に関連するものの2種類がある。 princeps系統の称号はプリンケプスの項で詳しく述べるように、ローマ皇帝の称号に起源をもち、本来の意味は独立した領邦をもつ君主のことである。これに対してdux系統の称号は元々辺境の軍事司令官の官職であったが、後に強力な諸侯を指すようになったものという違いがある。(duxの指導者という意味はイタリア語で長く残り、ヴェネツィア共和国の元首の称号「ドージェ」、イタリア王国でムッソリーニが称した「ドゥーチェ」(統領)もduxの系統にある称号である。) これらの区別は、称号の歴史的経緯を異にする漢字では完全に対応する訳語は作られていない。そのため西ヨーロッパの王侯貴族の称号を日本語に訳す際には、princeps系統の称号とdux系統の称号のいずれも公と訳されることがあり、しばしば混同される。地域によってはduxの中でも君主(princeps)の地位を認められた者があったり、国王の臣下であるのにprincepsの称号しかもたない者があるなど、両者の関係は複雑に入り組んでいる。 区別のためドイツのprincepsを侯と訳すこともあるが、これとは別に英語のmarquessに当たる称号の訳がほぼ侯爵で定まっているため、この場合も別の混同が生じる。ただしフランスにおけるコンデ親王(Prince de Condé)のように、王室から分家してprinceの称号を得た世襲の大貴族を公ではなく親王と訳すことがある。ただこの「親王」という称号は、皇族を皇帝より下位の「王」に封ずる習慣のあった東アジアにおいて、より皇帝に近い皇族、王の中でも特に上位の者を「親王」としたものであり、王族を親王と訳するのは原義からすれば矛盾を含む。また「大公」と訳すこともある。princeps系称号のうち領主としての地位を意味するドイツ語のフュルスト(Fürst)は侯、侯爵(近代)などの訳が多い。 なお女性で公位・大公位に即いた者は女公(じょこう)・女大公(じょたいこう)という。注意しなければならないのは、ヨーロッパ言語では「女王」を表す語と「王后」を表す語が同じ語(例:英語では queen)であるように、「女公」と「公妃」、そして「女大公」と「大公妃」もそれぞれ同じ語で表されるという点である。例えば英語では、duchess は「女公」または「公妃」を表し、grand duchess/archduchess は「女大公」または「大公妃」を表す。また princess に至っては「女公」または「公妃」に加えて、「王女」または「王子妃」を表す場合もあるので特に注意が必要である。
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