ヨーロッパでの織物産業の発達
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 23:00 UTC 版)
「織物」の記事における「ヨーロッパでの織物産業の発達」の解説
ヨーロッパでは羊毛が主要な繊維原料で、その他亜麻やイラクサも用いられていたが、9世紀にはシシリアやスペインに木綿がもたらされた。12世紀、ノルマン人による南イタリア征服を通じて、木綿はヨーロッパ全域に広がった。また東方より進んだ絹織の技術が流入し、他の原料による織物の技術にも応用された。それまでヨーロッパでは原始的な縦糸錘竪機が主流であったが、10世紀から11世紀にイスラム圏から足踏み式の水平織機が入ってきた。 中世後期になると、都市の発展と技術発展により、織物業の専門化が進み、織物の生産・販売はギルドが独占するようになった。専業化によって技能の改良・伝承が進み、より細い糸でより品質の高い織物が生産されるようになり、交易品として発展していった。特にフランドルのブルッヘなどでは大規模な織物製造業が発展し、このような機織りが盛んな都市では、織物業者のギルドが政治的にも経済的にも大きな力を発揮するようになっていった。13世紀には、問屋制家内工業体制が成立した。織物商人は羊毛を購入して織手に前貸しし、決まった価格で織手から完成品を買い取ることで、織物産業を経済的に支配した(商業資本主義)。イングランドのノリッジ等は毛織物商人によって栄えた。この頃までに、足踏み式糸車の開発によって、糸の供給が潤沢になり、織物生産の速度が向上した。 14世紀の百年戦争やペスト流行による人口減少を経て、16世紀のイングランドでは囲い込みや、都市のギルドの制約を受けない農村での集約的な毛織物生産が行われるようになり、工場制手工業へ移行した。大陸ヨーロッパでも、プロテスタントが織物業で成功し、高度な技術を持っていたが、フランスにおけるユグノー(プロテスタント)の迫害が深刻化し、17世紀後半には彼らがフランス国外に移住したため、イギリスやドイツでの毛織物や絹織物業が発展した。大型の織機の操作は重労働で、専門職人は男性が占めるようになっていった。
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