ポリエン系抗真菌薬
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ポリエン系抗真菌薬(ポリエンけいこうしんきんやく、英: polyene antimycotic)は、真菌をターゲットとした抗菌性ポリエン化合物である[1]。ポリエン系抗生物質(ポリエンけいこうせいぶっしつ、英: polyene antibiotic)とも呼ばれる。これらのポリエン系抗真菌薬は通常、ストレプトマイセス属 (Streptomyces) のいくつかの種より得られる。これらのポリエンは真菌細胞壁中のエルゴステロールに結合し、細胞壁の漏出を促進することによって真菌を細胞死に導く。アムホテリシンB、ナイスタチンおよびナタマイシン等が、ポリエン系抗真菌薬の例である。
これらの化学構造は、環の一方に複数の共役炭素-炭素二重結合(ポリエン)を、もう一方に複数のヒドロキシ基を含む大員環(環状エステル〔ラクトン〕)である。また、しばしばd-マイコサミン基(アミノグルコシドの一種)を有している[2]。一連の共役二重結合は通常紫外-可視領域の電磁波を強く吸収するため、ポリエン系抗真菌薬はしばしば黄色を呈している。



その他のポリエンの例
出典
- ^ Dixon DM, Walsh TJ (1996). “Chapter 76: Antifungal Agents”. In Baron S. ed.. Medical Microbiology (4th ed.). Galveston (TX): The University of Texas Medical Branch at Galveston. PMID 21413319
- ^ Volpon L, Lancelin JM (2002). “Solution NMR structure of five representative glycosylated polyene macrolide antibiotics with a sterol-dependent antifungal activity”. Eur. J. Biochem. 269 (18): 4533-4541. doi:10.1046/j.1432-1033.2002.03147.x. PMID 12230565.
ポリエン系抗真菌薬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 14:57 UTC 版)
作用機序は、真菌の細胞膜を構成する物質の1つであるエルゴステロールに結合して、真菌の細胞膜の機能を障害し、細胞内の成分を漏出させて、真菌を殺す。しかし、ヒトなど動物の細胞膜を安定させる役割を持ったコレステロールにも結合するため選択毒性は低く、副作用も強い。代表的な副作用には、発熱、悪寒、肝障害、急性尿細管壊死など腎障害、低カリウム血症などがある。抗真菌作用は濃度依存的である。 なお、ポリエン系抗真菌薬はマクロライドの構造を有し「ポリエン系抗生物質」と呼ばれる場合もあるものの、マクロライド系抗菌薬とは異なる。細菌の細胞膜はステロールを含まないため、細菌に対してポリエン系抗真菌薬は、ほとんど抗菌活性を示さない。 また、ポリエン系抗真菌薬を経口投与しても非常に吸収され難いため、注射剤として使用する。 アムホテリシンBをデオキシコール酸で懸濁させた注射薬のファンギゾンが、深在性真菌症治療薬として使用されてきたものの、副作用のため充分な投与量、投与期間が確保できなかった。リポソームアムホテリシンBであるアムビゾームは、アムホテリシンBとコレステロール複合体がリポソーム膜に組み込まれた構造をしており、その平均粒子径が100ナノメートルと小さいため、網内系細胞に取り込まれ難い。 血中でリポソーム構造を維持したまま安定に存在し、正常組織においては血管から漏出し難いのに対して、感染部位においては血管透過性の亢進によりリポソームが漏出し存在する真菌に特異的に作用し抗真菌活性を示す。すなわち、リポソーム製剤のアムビゾームは、ファンギゾンよりも副作用が緩和されている。 アムホテリシンB(amphotericin B)(AMPH)- 真菌を直接殺す殺菌的な薬物だが、腎毒性の高さが問題である。 リポソームアムホテリシンB - アムホテリシンBをリポソームに封入した製剤。 ナイスタチン(nystatin)(NYS)- 消化管へのカンジダ感染に経口投与で用いる。外用薬として用いられる場合もある。
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