プロペラ制御盤の改良
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 14:21 UTC 版)
「大雪丸 (2代)」の記事における「プロペラ制御盤の改良」の解説
推進用可変ピッチプロペラ(CPP)ならびにバウスラスターの可変ピッチプロペラ(BT)の翼角遠隔操縦装置は、操舵室中央、操舵スタンド左に続くプロペラ制御盤上の主操縦レバーのほか、離着岸時、船長が操舵室左舷端から岸壁を目視しつつ、直接レバー操作が行えるよう、操舵室左舷端に設置された補助操縦スタンドにもCPPとBTの補助操縦レバーが装備され、これら主・補助いずれの操縦レバーからでも翼角操縦できるよう、両レバー間は機械的に連結され、どちらか一方を操作すると他方も同じように動き、その結果、主操縦レバーに接続されたシンクロ制御変圧機が操作されて翼角指令の電気信号が出された。 ところが、第1船の津軽丸(2代)が就航してみると、この主・補助操縦レバーの機械的連結が原因で、これらのレバー操作がいずれも非常に重く、しかも微動調整ハンドルもないため、津軽丸型では18ノット程度の高速航行時の0.2度のCPP翼角の変化は船速で0.4ノット、機関出力で約500軸馬力の変化にもなるため、高速航行時に希望する速力に見合った細かな翼角指令が容易に設定できず、不評をきたしてしまった。一方、左右に動かすBT翼角操縦レバーはプロペラ制御盤の手前側に設置すると邪魔になるだろう、ということで奥に設置されたが、このレバーも重く、手を伸ばして動かさなければならないため十分に力が入らず、同様に不評であった。 しかし、津軽丸型は連続して建造されていたため、この件が明らかになったとき、既に第2船八甲田丸、第3船松前丸(2代)は建造中で仕様変更できず、着工前であった第4船の本船から、CPP翼角操縦レバーへの微動調整装置付加とBT翼角操縦レバーの手前側移設を行った改良型プロペラ制御盤が導入された。 前3隻のプロペラ制御盤で採用されていた各翼角操縦レバーのカマボコ型行程に沿った直線型の実際翼角計は指針が長大で重くなり、これを精密に駆動するサーボモーターをプロペラ制御盤内に組み込んでいたため、これ以上の機器増設スペースは残されていなかった。このため、本船からはこれら直線型翼角計は一切やめ、プロペラ制御盤上に四角い箱を載せ、その箱の両側面に、前後に動かすというよりは倒す感じの2本のCPP 翼角操縦レバーを設け、このレバーの回転軸に新たに微動調整用グリップを装着した。またこの箱の手前の面に、左右へ倒すBT翼角操縦レバーを設置し、この箱の上面には、指針駆動用サーボモーターの不要でコンパクトな丸型の、外周が指令翼角指針、内側が実際翼角指針のBT翼角計を中央奥に、同様のCPP翼角計を左右に配置し、中央手前にはBT翼角中立灯を設置した。 また、四角い箱手前の盤面に余裕ができたため、前3隻では、両側CPP翼角操縦レバーの間に置かれていた、小スイッチ類は、この部分に横一列に並べて配置され、その配置は、左側から、左舷CPP 操縦方法選択スイッチ、左舷CPP翼角中立表示灯、左舷CPP非常用翼角操縦スイッチ(ノンホローアップ)、BT油圧ポンプ・主電動機発停スイッチ、BT非常用翼角操縦スイッチ(ノンホローアップ)、BT操縦方法選択スイッチ、右舷CPP非常用翼角操縦スイッチ(ノンホローアップ)、右舷CPP翼角中立表示灯、右舷CPP 操縦方法選択スイッチの順であった。奥の斜面部分には左から左舷主軸回転数計、左舷主機稼働台数表示器、BT駆動電動機電流計、右舷主機稼働台数表示器、右舷主軸回転数計、時計の順に配置され、この四角い箱が邪魔で低い位置は見えづらいため、主機稼働台数表示器は前3隻より高い位置へ移動し、以後この配置が標準となった。 しかし、このCPP 翼角操縦レバーの微動調整装置も回すのが重く、決して満足できるものではなかったが、手前に移設されたBT翼角操縦レバーは操作しやすくなった。なお、操舵室左舷端の補助スタンドは前3隻と同仕様で、依然CPP、BTとも実際翼角計は装備されていなかった。 この改良型プロペラ制御盤では、CPP 翼角操縦レバーの操作の重さを根本的に解決することはできなかったが、就航後10年以上使用された後、 1978年(昭和53年)、使用頻度の低かったCPP補助操縦レバーの廃止で、ようやくプロペラ制御盤のCPP主操縦レバーの操作を軽くできた。このときプロペラ制御盤上の四角い箱も撤去され、十和田丸(2代)のプロペラ制御盤に準じたものに交換された。これにより、CPP 翼角操縦レバーも十和田丸(2代)同様、先端グリップを持ち上げてロックを解除し、このグリップを回すと微動調整できるタイプとなり、BT翼角操縦レバーも手のひらで押すとロックが解除されるレバー付きのグリップハンドルとなった。なおBTの主・補助操縦レバー間の機械的連結機構は、就航後も改良が加えられ、実用レベルに維持されたため、左舷補助スタンドのBT補助操縦レバーは機械的連結を維持したまま終航まで使用された。
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