ブルゴーニュ公領、アキテーヌ公領、イングランドその他の地域
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「ゴシック建築」の記事における「ブルゴーニュ公領、アキテーヌ公領、イングランドその他の地域」の解説
ブルゴーニュではロマネスク建築が高度に発展していたため、その伝統が生き続けた。ブルゴーニュにゴシック建築が導入されるのは1170年頃であり、これはヴェズレーで建設されたサント・マドレーヌ大聖堂の内陣に見ることができる。全体の構成はソワッソン大聖堂の袖廊に近いが、立面は3層構造で、線的な要素を強く意識したものになっており、これは13世紀以降、この地で盛んになる後期ゴシック建築のデザインに受け継がれた。 ノルマンディでゴシック建築の雛形が形成されたにもかかわらず、プランタジネット家の勢力下にあった北、西フランスでゴシック建築が導入されるのは遅かった。アンジュー、メーヌ、ポワトゥーなどにゴシック建築が建設されるのは13世紀初頭になってからであるが、プランタジネット家の支配下で形成されたゴシック建築は、イル=ド=フランスとは異なる形態を獲得した。 プランタジネット・ゴシックの代表的な建築物はアンジェのサン・モーリス大聖堂である。極度に湾曲したヴォールトを頂く身廊の立面には、アーケードやクリアストーリなどの分節化が見られない。もともと単廊式で木造天井を持った建築物であったらしく、この形状はポワティエのサンティレール聖堂も同様で、ロマネスク建築の伝統を残している。アンジェ大聖堂とは異なる形式として名高いのがポワティエの大聖堂で、これは1162年に起工されたが、完成は13世紀末のことである。ほぼ同じ高さ、同じ幅の身廊と側廊で、後にホール式と呼ばれる教会堂の空間に近い。アンジェのサン=セルジュ聖堂はこの形式に則った平面となっているが、細い柱によって分節されたベイと枝リヴによって分節されたヴォールトが、さらに華美な印象を与える。アンジェ、ポワティエともに、聖堂の形式としてはロマネスク建築において見られるものであり、細部については洗練されているものの、全体としての革新性はイル=ド=フランスのゴシック建築を超えるものではない。プランタジネット朝の建築は後期ロマネスク建築と初期ゴシック建築との間にそれほどの違いがないことを証明している。 イングランド本土に建設された最初の本格的なゴシック建築は、1174年に起工されたカンタベリー大聖堂である。最初の建設はギョーム・ド・サンスによって設計されたが、不慮の事故によって工事はイギリス人のウィリアムに引き継がれた。カンタベリー大聖堂は後陣が二重シェル式で造られており、全体として彫塑性の強いイングランドのロマネスク建築の伝統を残している。リンカン大聖堂はカンタベリーの後継であり、パリのノートルダムと対照的なロマネスク建築の厚い壁を思わせるクリアストーリ、屋根裏に開いたトリフォリウムなどの特徴は、イングランの独自性を物語っている。
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